さて、春秋恒例の四季の自然スクールの、夜の飲み会に、スケジュールを縫って駆けつけました。飲めば、講師と保護者という垣根を超えて、本音で話しやすい。といっても、語り合うために飲み会やりましょう、では難しい。稲刈りやキノコ採りという自然に触れるという目的があればこそ出かけてきてもらえる、数少ないチャンスなのです。今回も、多分保護者の方々が想像している以上に、私はたくさんの宝物を拾うことができ、考えるところも大でした。
今回は、一人のお父さんが、奥さんにことづかってきたという苦言を言われたときには、場が微妙に凍りついたりもしたのですが、率直に言ってもらえるうちが華。謝って許してもらいました。お母さん方はやや遠慮がちでもありましたが、それでも、「ええ、男の人、そんなふうに思ってるんですか」というように、いつものように妻の本音・夫の本音が飛び交い、くだけた話も名人の話芸もあり、笑いにあふれ盛り上がりました。
中で面白かったのは、順番に感想などを言ってもらって、一人のお父さんに回ったときのことです。「春に植えた苗がこんなにきれいな黄金色の稲に生長していたこと、生まれて初めて本物の天の川を見たこと、そして初めてちゃんとしたっていうと変だけど流れ星を見たことに、子供より私が本当に感動しました。」このお父さんは東京育ちの都会っ子なのですが、続くセリフが振るってました。「もう、嬉しくて、すぐに家内にIモードでメール送りましたよ、ワハハハハ」
若い頃の加山雄三のようなストレートな爽やかさに、お母さんたちから拍手も起きる中、政治の守旧派ではありませんが、私を含む恐妻家一派は一瞬時間が止まり、ある人は「あり得ない…」、ある人は「いいなあ」と、カルチャーショック状態でしばし過ごしました。
ご夫婦の未来に幸多からんことを。
一方こんな鋭い意見も出ました。家族単位で石でかまどを作り、ミニサバイバル風に空き缶でご飯を炊いたプログラムについてですが、「そんなルール誰にも言われてないのに、何か競争になっちゃってんですよね。『一緒にやりませんか』って、誰も言い出さないんですよね」と言われたのです。思わず唸りました。3・40代の保護者世代の弱点を、一言で突かれたように感じたからです。
小さい頃から競争が前提。割と勉強ができると、中学・高校・大学とかなり厳しい選別を潜り抜けることを迫られる。テレビが当たり前にあった核家族世代で、おせっかいや深いかかわりを敬遠し、みんなと寄りかかりあって生きるということが苦手。そんなカラーのひとつの表れを、ズバリと指摘されたのではないかと思います。
青年の諸問題を考える中で、私は最近とみに、人は頼りあって初めて安心できる生き物なんだなと、再認識しているところです。もっと気楽に飲み交わし、お互いを頼り合う文化をとりもどさねばならないように思います。