『たからもの』2005年8月号
先日、素敵なお話をあるお母様からしていただきました。
T君が花まるに入会したのは、年長さんの終わり頃のことでした。入会当初、どうしても自分のペースでやりたくて、回りの子とコミュニケーションをとるよりも、自分のことを見てほしい、やりたいようにしたい気持ちが強いT君に、「貸してもらったときにはありがとうと言うんだよ」から、「先生がお話ししているときは、目を見て待とう」「いい姿勢で書くと、いい字が書けるんだよ」と、ひとつひとつ伝えていくところから始まりました。
家庭という環境の中では気づかないことはたくさんあります。集団に入り、他者(私)から指摘されて始めて直面するT君への課題にも、お母様は“将来の彼にとって大切なこと”として捉え、家庭と花まるで意識を共有しながら、二人三脚でT君の成長を見守ってこられたのだと思います。
エピソードはこうです。
電車に乗って学校に通っているT君は、ある日の朝、一年生のときに彼を担当していた講師と、駅のホームで線路をはさんで会ったそうです。その時講師が、「じゃんけん…」のポーズをして見せてくれ、ホームをはさんだ二人はじゃんけんをして、T君が勝ちました。喜んだ彼は、花まるの教室でやっているいつもの喜びのポーズ「イエイ!」をすると、向こう側にいる先生は今度は指で、「ポイントアップ!」のポーズ、T君はそれに応じて「イエイ!」…やがて電車が来、ニコニコの笑顔で学校に行くT君を見て、本当に嬉しかったと。
『時間にして1~2分のことだったんです。その光景を見て胸が熱くなりました、私はまったく入れなかったんです。あんなに離れていて、すぐにじゃんけんをして笑顔になって…ふたりの間に、言葉も何も必要ないのですね。先生の自然な笑顔が、本当に花まるで息子のことをよく見てくれていたということが、伝わってきたんです。ありがとうとお伝え下さい。』
お母様の回想は続きます。
『私が、高濱先生が講演会で言われていた“やってはいけない激情叱り”をしてしまった。そのときに先生が連絡帳に書いてくれた、「お母さんの気持ちがすぐにT君には伝わるようです。たくさんたくさん褒めてあげてください。」と書かれた文章を、今でも覚えています。』
今年になって花まるのことをあまり口にしなくなったから、あえて聞かないでいたら、あんな飄々としていた子が、花まるで友達が出来て「サマースクールも一 緒に行きたい」と言い出した。先日の、「親子で受験!花まる漢検」企画にも、「お母さんは来ないで。僕の花まるだから。」と言う息子に、驚いたと同時に、学校とは別に居場所というものを持っているのだなと感じたのだそうです。
『花まるは、ただ勉強を教えるというだけではなく、しっかり見てくれているということが本当に嬉しい。お友達が出来たことも嬉しい。』そうおっしゃるお母様に私が、「(あの頃の連絡帳を)読み返したくなりました。」と言うと、「だめです。」あっさり断られました。
「あの一冊目の連絡帳は、私にとっての宝物ですから。」と。
家庭と花まるで、一緒に子どもたちの将来を考えていく。そのことが出来れば、本望です。
暑い夏が始まりますが、サマースクールの後、元気な子どもたちとまた教室で会えるのを楽しみにしています。何かあれば、いつでもご相談下さい。