高濱コラム 2006年 9月号

サマースクール・勉強合宿合わせて31日間連続の、夏の旅が終わりました。さすがに終了した夜は、机に突っ伏して眠ってしまい、「ああ疲れていたんだ」と気づきました。しかし、ちょうど尾瀬の風景が、木道を歩いても歩いても、ずっと素晴らしい景色が途切れないように、その地ならではの自然と子どもたちが織り成す、感動の花が咲き乱れる日々でした。

特に最後のサバイバルキャンプは、低学年時代の引率で大いに手を焼いた猛者たちがたくさん参加していて、長期のスパンでも成長していることを実感できたし、この4日間の中で、昆虫の羽化のように変身をとげる光景を目撃したり(それは、言いたいことを口ごもってしまっていた子が、男らしい迫力ある言葉で言い返している場面でした)と、継続的に参加してもらう意義をかみしめました。親元を離れての二泊のお泊り自体が大冒険だった一年生時代から、徐々に力をつけて、今回バスを降りて解散の公園に向かう彼らは、もう力強い青年の瞳でさっそうと歩いていました。

新たな発見もありました。それは「地元の子の魅力に触れさせる」ということの意義です。ある地では、遊んでいる川で化石が掘れることを一人の子が教えてくれて、「そうなの?」と驚くが早いか、もう一人が「こうやって割るの」と、いきなり頭大ほどの石を岩にたたきつけました。見事に貝や魚の化石が出て、参加した子はもう夢中で化石探しに熱中しました。

またある場所では、魚を釣りたいけれど餌がなかなか見つからず困っていたら、中2の少年が近寄ってきて事情を聞くや、森の奥に消えていき、ものの10分ほどで戻ってきて、「ほれ」と数匹のザリガニを渡してくれました。もらった子の表情は明らかに感動した人のそれでした。

そして、湯沢のY君。5年生の彼は、カジカ捕りの達人です。最初は年長コースの川遊びの場所で、弟と黙々とヤス突きをしていたのですが、話しかけるととても人懐っこくて、親切に捕り方を教えてくれました。今後数回来るから、いつも来てみんなに指導してくれと言うと、満面の笑顔。

次の回では、到着すると川の中から「おーい!」と手を振ってくれました。十を超える班に一匹ずつカジカをプレゼントしてくれ、皆で焼いて食べました。一匹足りないことが判明したときには、「分かった」と川に飛び込んで行って、1分ほどで「はい」と持ってきてくれました。リーダーも含めて尊敬のまなざしで見つめたことは、言うまでもありません。

最終の回では、宿まで猛然と自転車をこいで来て「今日は、新しい武器を持ってきたよ」と、網や竿を見せてくれました。何十分でも水面に顔をつけて捕り続ける彼を見習って、6年生が何人もヤス突きに成功しました。

帰りに、「今度、二人で行こっか?」と誘われたことは、個人的に最高のプレゼントでしたし、花まるの子たちに、都会にいない彼のような存在の魅力に、たくさん触れさせてあげたいなと心から思ったのでした。

花まる学習会代表 高濱正伸