高濱コラム 2007年 2月号

肢体不自由児の宿命である、股関節脱臼の手術とリハビリのために、6ヶ月もの入院を余儀なくされている小2の息子。9月からずっと平日は病院、週末は帰宅の日々だったのですが、正月は家で過ごせました。その息子の「ママ」という寝言で目覚めた2007年、年明けから良いニュースが入ってきました。

一つは、一昨年夏に出版した「小3までに育てたい算数脳(健康ジャーナル社)」が、Amazonの2006年間ランキング・子育て部門で2位に入ったことです。小さい出版社ということもあって、一般の本屋さんからは撤収されているようですが、ブログを中心に、お母さんからお母さんへと、口コミでリレーしてもらえたようです。「花まる学習会としての所信表明」というつもりだったので、長い時間をかけて認めてもらえ、ありがたい気持ちで一杯です。

もう一つは、時代の変革の一つの柱である「公立中高一貫校」の目玉とも言える、さいたま市立浦和中学の初年度入試問題に、「なぞぺー3」に掲載していた「点字」の問題の類題が出題されたことです。点字のいくつかを例示して、行と段をカギとした規則を発見させ、結果としてその日から点字が読めるようになる、という「高学年なぞぺー」の中でも思い入れの強い問題でした。

もちろん、なぞぺーを参考にしたというよりは、私がそうだったように、数理的思考力の題材を、生活の中に探し出して、できるだけそのことを通じて、教養ないし人間力が増すようなものを、と願って考え続けた挙句の、たまたま同じ着地点だったのでしょう。しかし、文京都市浦和の公立の威信をかけて行われる入試の問題ですから、それなりに自他共に認める力ある先生方が出題されたはず。そのような方々の「作品」が、長年花まるで扱ってきた問題と同種だとすれば、それは誇ってよいだろうと思いました。

さて、昨年以上に仕事をさせてもらえそうでワクワクしていますが、新しい方々とのつながりが、新天地を開拓しつつあります。その中に、「老人ホームでの花まる」があります。仲介する人があって、保育所や老人ホームを運営するライフサポートという会社の社長とお会いしました。若くてエネルギーに満ち溢れた方で、意気投合し、ほぼその場で開催が決定しました。それは、長年の問題意識と合致したからです。

お年寄りがもっとも欲するのは、自由で暇な時間ではなく、「誰かに必要とされること」ではないかと、老人問題の様々な意見を見るたびに、感じていました。認知的な問題を抱えた方でも、子どもや動物など、本能として「世話しなきゃ」と思える対象が現れると、瞳に輝きが増すという事例などを見ていたからです。

一方で、すでに親となっている大人がそうですが、小さいときから、お年寄りがあまり存在しない空間で、大きくなっていく。そのことのバランスの悪さが、色んな社会問題のもとに、確実に横たわっているなとも思っていました。その両方の意味で、ホームに施しでなく積極的に定期的に子どもが通うことは、とても意義があると思うのです。

もちろん現実は甘くありませんから、必ずいくつか壁は出てくるでしょう。しかし、きっとうまく行くと信じて、挑戦していこうと思います。

花まる学習会代表 高濱正伸