高濱コラム 2007年 10月号

8月19日、長野県青木村のサバイバルキャンプコースにおいて、長年の夢のひとつが実現しました。「地元の普通の人たちとの交流」です。特に、思春期の前期にあたる5年生から中学生などの子どもには、とても意義深いものになるとは思っていたのですが、これまで色々と挑戦しても、どこかかしこまった関係だったりして、納得のいくものではありませんでした。

しかし、今回は違いました。それは、村の有志による「ええっこ村」という団体の一日農村体験の企画です。昔、米作りにおける共同体をええっこと呼んだことにちなんだ名で、最大の特徴は、農家それぞれに、もてなし方がまかされていることです。以下は、参加した子どもたちに、体験が終わった直後にインタビューした内容です。

M家:キュウリ・トマト・ピーマン・ナスなどを収穫した。川でカニとりをした。ゲートボールをやった。収穫で「こういうのを採ったほうがいいよ」と教えてくれた。虫を葉っぱと思って触って大騒ぎだった。もう一度Mさんところにムチャクチャ行きたい。

O家:ミニトマト・ミョウガ・トウモロコシなどを収穫。国宝の大宝寺三重塔を案内してくれた。すごく美しかった。ミョウガがあんな風に生えているなんて驚いた。ものすごくいい人だった。

T家:カカシの顔を書かせてもらった。古墳を見学した。草むしりを手伝った。ブルーベリーを採った。家のお風呂に入れてもらった。戦争のときの空襲の思い出の話をしてくれて、とても心に残った。どうしてここまでしてくれるんだろうと感じるくらい可愛がってくれた。あの家にもう一度行きたい。

Y家:赤ジャガ・白ジャガ・モモなどを採った。アスレチックや展望台に行った。野菜畑の説明で「へえ」と驚くことが多かった。出されたトン汁は今まで食べたことがないくらいにおいしかった。ご主人は世界一やさしい人だと思った。泊まりたかった。もう一度、あの家だけに行きたい。

H家:商品である花の箱詰めや箱作りをやった。あんなに大変な思いをして花が送られてくるとわかった。家の犬や猫と遊んだ。マレットゴルフに連れて行ってくれた。汁ものは温めなおしてくれたりして、一つひとつ真心が伝わってきた。ご夫婦と仲良くなれてホントに良かった。
K家:昆虫博物館に行った。ダリアやチョコレートコスモスの栽培を見学した。ブータンのことを詳しく教えてくれた。学校のことなど、一人ひとり話をじっくり聞いてもらえたことが嬉しかった。すっごく優しくしてくれて、感激した。

I家:裏山の谷間で、竹で手づくりした流しそうめんをやってくれた。皮までおいしいスイカを食べた。カブト虫をもらった。自慢したくてもしきれないくらい良かった。別れ際に、涙で両手を握って「また来てね」と言ってくれて、自分も泣いてしまった。

 徐々に暗くなる夕刻のキャンプ場で、ごはんを炊く煙にときどき目をしばたたかせながら、順番に、班ごとにインタビューしたのですが、みんながみんな「自分たちこそが一番いい家に行けた」と確信していることが、印象的でした。弾む語調で、競って、懸命に伝えようとする子どもたちの、膨らむ心がまぶしくて、これまでサマースクールを継続してきて本当に良かったなあと、しみじみと思いました。

花まる学習会代表 高濱正伸