Rinコラム 『なにかひとつ』

『なにかひとつ』2007年 5月号

4月号の講師紹介のページで「何かひとつ」を持っていることが大切、と書きました。それというのも最近、それを再確認するきっかけになった春の出会いがあったからです。

Bさんとは、「なぞぺ~」の問題製作を依頼する面接で出会いました。

花まる学習会の「創造性」や「遊び心」を世の中に発信していく場所として、新しく3月に都内に事務所「okarina(オカリナ)B」を創りました。その建物自体が、「創造性」と「遊び心」満載。訪れる人が笑顔になるような場所、もう一度来たいと思わせる空間になっています。その空間に 心のアンテナがふるえた人と、いわば必然的に出会ったというわけです。Bさんを通じて、「okarinaB」で個展をしたいという写真家のMさんとも打ち合わせをしました。

「考えてみると、ずっと小さいころから古いものに興味があったのだと思う」
古着屋さんとして自分の店を持つために準備中のBさん。写真のテーマについて、
「鳥のほかにも蝶とか、空を飛べる生き物がいいかなとか、優しい目の動物がいいかなと考えています。僕は子どものころからそんな動物が好きでしたから」
とMさん。二人に共通していたのは、‘幼児期の記憶’と‘今の自分の目指しているもの’が線で結ばれているということでした。どちらも、自分が、何が好きなのかということをしっかり分かっている。心が躍動する瞬間を意識しているのです。

子どもたちの教室の様子でも同じことなのですが、「躍動している瞬間」=「楽しいと思える時」というのは、頭も心も能動的に動いている。つまり、自分の頭で考えている、自分の心で感じていることに集中している。それは、ただ何も考えずノートをうつしているだけのような、「こんな自分は いやだ、意味のないことはやりたくない。理解して先に進みたい」と感じることができるか、ということとも通じます。

「何もやりたいことがない」なんていう言葉を耳にすることがあります。小さいころから、「○○やってもいい?」とオトナの判断を欲しがるのではなく、「これをやりたい」と好きなことに没頭できる時間をもっているかどうか。「なにかひとつ」は、何だっていいのですが、持っているといないとでは大違い。「なにかひとつ」を持ち続けて輝いている大人になってほしい。それが本当のしあわせのかたちです。

春。花まるがはじまるのをどきどきして待っていた子どもたちと、それから講師たち。4月はみんなのどきどきと、ちょっぴり背伸びをしたような誇らしさと緊張感が、教室のあちらこちらで躍動しています。さあ、新しい一年が始まりました。花まるは、ご家庭と協力して同じ意識で子どもたちを見てまいりたいと思います。何かあればいつでもお知らせください。今年も一年、よろしくお願いいたします。