Rinコラム 『そのままの自分でOK』

『そのままの自分でOK』2009年5月号

自己肯定感。自分に対する、根拠のない自信。

彼らが20歳の大人になったときのことを見すえたとき、学習面でも、メンタル面(人間性)でも伸びしろがあるかどうかというのは、まさにこの「自己肯定感」にかかっています。

逆に、「ママは勉強ができるぼくが好き」「上手にできない私は◎がもらえていない」、条件付きの愛情しか受け取ってこなかった子どもたちは、伸び悩みます。学習面でも、人生においても。あるがままの自分でOKと、思えないからです。

 

「ピグマリオン効果」についてご存知でしょうか。

アメリカのローゼンソールら(Rosenthal, R. & Jacobson, L.1968)が、教師が児童・生徒に対してもっているいろいろな期待が、彼らの学習成績を左右することを実証した実験で、「ハーヴァード大学式学習能力開花期テストは子どもの1年後の成績の伸びを予想できる」というメッセージを教師に与え、実際の成績とは別にランダムに子どもを割り当てて、その後の成績の伸長を検査しました。すると、教師が期待をもった子どもは、8カ月後のテストの成績で高い向上を示していることがわかったのです。期待効果は、教師のその子どもに対する行動を、意識しないうちに変化させていることも明らかになった。というものです。

 

「そのままの自分でOK」というメッセージを、幼児期に受け取ってきたかどうか。子どもたちは、親をはじめとする周囲の大人たちから、ことばではなく、ほとんど無意識のうちに表れてしまっている態度からも敏感に感じ取っているのです。いくらことばで、「すごいわね」と言っていても、心の中で、「どうしてこの子はこんなに何度言っても同じ間違いをするのかしら」と悩んでいたら、それは無言のメッセージとして、ことばよりも強くこどもたちの深層心理に伝わります。

 

もしも、心の中とことばが一致していない褒めことばを言っていたことに気が付いたら、それは大きな一歩だと思います。なぜそうなってしまっていたのか、考えることで見えることがあるはずです。その原因が、自分自身のコンプレックスが根底にあるのか、夫婦間の意見の不一致からきているのか。それとも、兄弟との比較によるものなのか。

兄弟姉妹は、ひとりひとり別の人格を持って生まれてきているので、本来「同じように育てているのに同じように育たない」とは当たり前なのですが、同じにできないことにばかり目がいって、その子だけにある能力を見落としてしまっていることはよくあります。

 

「自己肯定感」「自分を愛せるということ」実は、これこそが、自分らしい人生を歩んでいくために欠かせないエッセンスなのだということを、忘れないでいなければと思います。