『芸術家のこころで』2011年10月号
毎年秋のこの時期は、私が主催している、ギャラリーOkarinaBが大忙しの時期です。2007年に、日本の芸術家を応援する目的で立ち上げまし た。これまで国内外問わず、多くのアーティスト、クリエイター、ミュージシャンの発表の場としてほぼ無償で場所を提供し、「アソビゴコロと創造性の発信 地」は継続してきました。
私自身が根っからの芸術家であることもあり、若く才能のあるアーティストが、のびのびとやりたいように表現したいとき、日本ではその機会があ まりに少ないことを実感していました。そして、高濱も私も、「芸術か、教育か」と自身の生きる道を二択で考えていたという点では、共通する問題意識を持っ ていました。感性の豊かさこそが、魅力的な人間を育てるし、仕事のできる人間、愛される人はみんな、芸術の深い感動を知っているのです。
塾業界では、この活動はおそらくまだ知られていないでしょう。花まる学習会だからこそ、やっているのだと思います。本質的に日本のため、将来 の子どもたちのためになることだから、やる。もしもお金儲けだけが目的の会社であれば、こんなことをやる必要はないでしょう。本気で大切なことと信じてい るから、続けているのです。
一芸術家として、そして一教育者として、私が日本に生まれてきた意味とは、後に残していくものは何だろうかと、ギャラリー立ち上げ以来、ずっ と考え続けてきました。そして最近、関わる人たち、子どもたちに、この背中を見せていくことが使命なのだろうという考えに至りました。先生は、先生だった けれど、芸術家のこころで、職業というかたちにとらわれずに、よいと思ったことを信じて、人生を楽しんでいた、そんな人がいたなあと、ずっと後になってで も気づいてくれたりすることがあれば、意味はあったと思うのです。
表現したり、創作したり、工夫したりすることの楽しさを、生まれたときからすべての人間が持っているのだなと、年中年長授業をしているといつ も思います。何かを「創り出す」というのは、元来楽しいもの。それは、人類の歴史を見れば明らかです。ゲームやパチンコは、与えられたものですが、外遊び や工作や手芸や、作文やお絵かきは、何もないところから生み出し、工夫し続けられることに、ほんとうの喜びがあるのでしょう。
11月27日の日曜日には、これも9年継続している、障害のある子どもたちも一緒に楽しめるミュージックコンサート「Shining Hearts Party Ⅸ」が開催されますね。たくさんのプロのミュージシャンの生演奏を、ぜひ体で味わって欲しいと思います。私のお勧めは、花まる学習会卒業生の、さとうりゅ うえい君のハーモニカ演奏です。初めて聞いたとき、そのパフォーマンスの衝撃と感動で体が震えました。私も、高濱らと8年間続けている音楽活動 KARINBA(カリンバ)のメンバーのひとりとして、例年同様、呼びこみ隊として登場します。ボランティア参加や、シップキッズとして舞台で参加される 子どもたちとも、お会いできるのを楽しみにしています。
教室でも、遠足(11/3)、作文コンテスト(11/14)、漢検(12/12)とイベントが目白押し。子どもたちが楽しく学べるよう今後も講師一同邁進します。心配なこと、相談はいつでもご連絡ください。