『自由自在の力とは―「より立派に」』2012年11月
「子どもは自由にのびのびと」。よく聞くことばです。
でも自由と、勝手・わがままとは違うものです。自由とは、一体なんでしょうか。
例えば本を読みたい、山登りをしたい、絵を描きたい、何かをやりたいと思ったときに、自由自在にできる能力が自分にあるかということでしょう。「ピアノを好きに弾いてください」と言われて、弾ける人は、自由なのです。
自由とは、立場のことではなく、能力のことです。心のままであること、思い通りに行動できること、自由自在にできる力。そして、自由とは、規律やマナー、ルールの中にこそ存在するものです。ゲームには必ずルールがあって、その中で遊ぶから面白い。五、七、五という縛りの中で考えるからこそクリエイティブになれる。道路交通法と、運転のマナー、技術があってこそ、車を自由自在に運転できるのも同じことです。つまり強制があったとしても、そこに必ず自由はあるのです。そう、どんな能力を得る場合でも、最初に身につけなければならないのは、マナーです。何かができるだけでは、だめなのです。
例えば、年中年長教材の「運筆」は、自分の思い通りに手を動かして、引きたいと思ったところに自由自在に線を引ける力、ひいては自由に書ける力を訓練しているものです。それを教室の中で仲間とともに、ルールとマナーを学ぶ中で楽しく身につけているのです。
さて、何かができるようになるためには、より多くの訓練、つまり繰り返すということは、とても大切です。しかし、ただたくさんやればいい、ということではありません。できることを繰り返すこと。上手なやり方を、たくさんするということです。
正しい練習の仕方とは、できることを、確実にすることなのです。失敗を繰り返すのは、実は失敗する練習をしているのと同じこと。肝心のときに、失敗した体験が出てきます。一ランク落として練習、を繰り返すと、失敗の体験がないから、本番で150パーセントのことをやらせても大丈夫。失敗をしないのです。
跳び箱だったら、四段を飛べたら何度も四段を跳ぶ。もっと上手に。よりへっちゃらに。「上手さ、立派さ」を追求する。どんどん得意になっていく。そうするとあるところで六段を跳べる力がついてくる。そのときに、跳ぶのです。歌もそうです。上手に。楽しく。心をこめて。正しい音程で。「立派さ」を求めるほうが、早く力を伸ばすことにつながるのです。
人は、一瞬にして前進します。さっき分からなかったことが、今分かるようになるもの。だからこそ、「より立派に」を意識してみてください。
「すごいね、さっきよりうまく書けたね」「前よりも立派にできるね」そうやって声をかけてあげることで、いつも自分が過去よりも成長していると感じられ、他人との比較ではない、自分の中からあふれ出る自信を、内面に築いていくことができるでしょう。