『競争心は何にもならない―「あの人よりも」ではなく「昨日の自分よりも」』
花まるグループの社員がよく口にする四字熟語があります。
それは「切磋琢磨」。
子どもたちのために、良いと思ったことをその場でする。いいことを発見したらすぐに教えあう。互いに互いを高めあい、一緒に向上していく。そういう意味です。
知性の成せる技とも言えるのですが、人というのは面白いもので、ほうっておくとすぐに何でも比較したがるものです。「お兄ちゃんはもうできたのにねえ」「もっと上手にやりなさい」「□□君に比べたらうちの子なんて」…子どもたちの耳に入ってくるこんな言葉の中には、誰かと「比べられた」という記憶がうまれます。
そして、そういう価値観が根付いてしまった子は簡単に、「ぼくのほうが早くできた」「私のほうが上手でしょ」というようなアピールや、承認を教室でも求めてきます。
そんなとき花まるでは、「そうだね、先週よりも早くなったんだね」「前よりもしっかり書けるようになったんだね」と、修正します。もしくは(小学生ならば)もっと直接的に、「前の自分と比べてごらん、人と比べる人は幸せになれないよ」と伝えることもあります。
いつも周りと自分を比べながら「できない自分」にフォーカスするのか、毎日が昨日よりも成長している自分自身に向きあい、それをエネルギーにしてゆくのか。
人を出し抜いて勝つことを考える人と、切磋琢磨してお互いを高めあいながら、一緒に向上していこうと思う人と、どちらが魅力的でしょう。
子どもというのは、もともと向上心のかたまりです。ほうっておいても「やってみたい」「知りたい」という気持ちで、まっすぐ上に向かって伸びていく。どんな子も「できるようになりたい」と強く思っている生き物です。
しかし彼らの向上心をつぶすのは簡単です。嫌いになる言葉をすこしでも言うと、その芽を摘むことになるわけです。他人との比較、必要以上の謙遜の言葉が、気づかないうちに子どもたちに何かを嫌いにさせてしまいます。
たくさんの家族と日々接していると、子どもたちがすくすく育っている家庭には必ず、素直な褒め言葉が存在しているという法則に気づきます。「そうなんです、ありがとうございます。」と、わが子への賞賛を笑顔で受けとめてくれる保護者の方の姿が、子どもたちの芽を伸ばす太陽となっているのでしょう。親馬鹿であれ、というのはそういう意味で、子どもたちの成長にとって必要な要素なのです。
今年一年をふり返って、自分自身と、それから家族みんなの、「去年よりも成長したところ」を挙げてみてはいかがですか。きっと素直に褒めてあげたいところが出てくるはずですよ。