『学習習慣』
この春、見事第一志望の県立高校に合格したRさん。彼女の合格を支えたのは、花まる時代から身につけた学習習慣でした。
花まる時代、「作家になることが夢」と言っていた彼女は、読書ラリーと作文を楽しみにしていた、きらきらと輝く笑顔が印象的な女の子でした。しかし、中学生にもなると、いつもすまし顔の落ち着いた優等生のイメージ。
そんなRさんが壁にぶつかったのは、中学2年の頃でした。「優等生」イメージは彼女にとって心理的に邪魔なものになっていました。成績の低迷する彼女に「どうした?らしくないぞ」とつい出てしまった言葉に、それまで見たことのない嫌悪感に満ちた表情で応え、言葉は最小限にとどめられます。やっと出てきた言葉を要約すれば、「自分は特別な活動がなく、生徒会などもやる気はない。その意味で、目指す県立高校は不利。将来何をしたいとかもない」、つまりモチベーションが上がらないというのです。
でも、Rさんは、やるべきことはきちんとやります。「真面目」というより「習慣」だなと感じていました。私は国語の授業を担当していましたが、漢字の宿題は、ノート法による指導どおりのやり方できちんとやります。「やり方がしっかりしているよなぁ」とほめると、「そのやり方が一番ラクだから」とそっけなく答えたこともありました。いや、単純に手を抜くことだってできるのに。「結果を出すのに一番ラク」ということなのでしょう。花まる時代でのサボテン・あさがお1日ページを当たり前にやれている花まるっ子は、続けることが苦になりません。4年生になって、ノート法など新しいフォームを与えられたとしても素直に受け取ることができるというのが、現場で見ていて実感することです。Rさんはまさに、その典型でした。また、読解の授業中、こちらが指示しなくてもいちいち「イメージ化」していきます。ノートをとりながら、登場人物の様子などを絵にしていくのですが、その表現の見事なこと!どんな時でも興味を持って目の前の文章に向かうことができる。そして、イメージしながら読み進めることが当たり前になっている。さらには、想い描いたことを表現しようと自然と手が動く。彼女の学習観の根底にある前向きさが透けて見えました。彼女は、結局、いつでもそうやって勉強を楽しめてしまうのでした。
その学習習慣のおかげです。成績が2学期末まで下降の一途をたどっていたRさんは、さすがに奮起した3学期末、成績を一気に上昇させることに成功しました。
それを機にRさんは自信を取り戻し、そして中3受験生となりました。高校受験に向けて話す中で、随分本音も語ってくれるようになりました。やはりずっと想い描いてきた第一志望校を受験したい、でも、特別活動での内申点の加点がないので不安…。大丈夫、そんなちょっとの点差は、あなたなら実力で(ペーパー試験での得点で)勝てるよ。小説家になりたいと花まるの頃はずっと言っていたけど、小説は無理かなと思って。でも、絵本ならつくれるかなと思って、文芸部に入りたい。いいね!絵も上手いもんね! …そんな会話を重ねながら、改めてしっかりと目標を見定め、受験に前向きになったRさん。仲間たちをたくさん笑わすお茶目なキャラも確立し、春、見事笑顔で想い描いていた第一志望校合格を手にしてくれました。
中学生らしく思い悩み、将来に向けて漠然とした不安に駆られた日々、どんな自分を確立したらいいのか迷い、周りから「当たり前」に思われる自分像に抵抗していた自分…。成長過程において当たり前に通るそんな時期を、志望校合格という成功体験で終えたRさん。その成功を支えたのは、花まる時代から彼女の根底にあった「勉強は楽しむもの」という意識と、やるべきことは当たり前にやる学習習慣。合格を報告してくれたRさんの笑顔を思い出すと、改めて思います。いい受験をしてくれたなぁ、と。