『「わかっちゃった体験」とは?』2013年6月
Q
負けず嫌いで、ズルをしてでも兄より優位に立とうとします。勉強も、わからないことやできないことがあるとすぐにやる気をなくします。他人を意識し過ぎずに、地道に課題を取り組めるようになってほしいと思うのですが、今どう扱うべきかよくわかりません。出来たことを褒めるだけで良いものなのでしょうか。
A
「わからないことがあるとすぐにやる気をなくします」というのはね、これはもうはっきりしています。原因は、お母さんの眼差しです。つまりどういうことかというと、どうしても計算とかの結果に「できたねえ」ということをやった家に、本当にこういうことが起こる。つまり「あっているかあってないか」ということで、お母さんが評価を与えてしまった、ということですね。「だってそうしかできない」って?いやいや、そんなことないですよ。計算とかなんかはそれでいいんですけれど、お母さんは、花まるに来た以上は、後伸びしてほしいって思って来てくれてるんですよね。でね、後伸びのね、一番の幼児期の要件は何かっていうと、「あ!わかった!」っていう、「わかっちゃった体験」ですから。だから今塾はパズルばっかりやってるんですよね。世の中の塾という塾はもうみんな、低学年はパズルっていう風になりました。なぜかっていうと、それが後伸びするってわかっているから。で、あれは何かっていうと、パズルをいっぱいやるといいって言うんではなくて、パズルの中に、「論理思考の基礎」があります。それからもう一つ、「発見の喜び」っていうものがある。つまり自分で解いていて、「なにこれ!」っていう壁がある。なぞぺーの特徴ですが、「なにこれ、見たことない」っていうものを毎回提示する。学校は、「こう解きなさい」というものが与えられて、類題が出されるわけです。なぞぺーは、「何だろうこれ!」というものが出される。でも、見ているうちに、「あ、わかっちゃった!これだな。そういう意味か!」とかそういうことですね。こういうときにね、すごい快感物質が出るんですよ、脳っていうのは。で、この快感を知っている子っていうのは、わかっちゃった喜びをしたくて勉強しますから。よく言うのが、ノートを見て写し、見て写し、というようなことは、そういうことをたくさん経験している子は、もう無駄って思いますよ、何のためにやってるんだろう俺は。と思いますから。無駄なことはしないんですよ。わかった時の喜びのために生きていますから、「答えなんか言わないで」って必ず言います、そういう子は。「教えないで」って言って。自分でわかりたい。で、その原点は、小さい成功体験なんですよ。
勉強がすっごくできる若者は皆、そうだった。プロ野球選手も同じですよ。ちっちゃいときに、お母さんが、「お兄ちゃんなんかより、あんたすごいよね!」という眼差し。そうするとね、「俺もっと喜ばせてあげられるし」と頑張るんです。それがとうとうプロ野球選手につながるんです。勉強できた人もみんなおんなじ。遺伝子なんてそうそう差はないですよ。やっぱり成功体験をどうあたえるかでね、変わってくるんです。湧き上がる喜び、天にも登るような気持ちというか。
つまり、この問題の背景にあるのは、こういう成功体験の少なさなんです。「正しくきちんとをやらせよう」っていうお母さんの家でこうなっちゃうんです。正しくきちんとは、あるひとつの基礎としてはすごく大事なんだけど、漢字とか文字とかね、計算の基本的なものは大事なんだけど、後伸びする子は、思考力体験が豊かなんですよ。で、それは難しくないんですよ。「わかっちゃった!」体験があるということ。だからなぞペーをやっているんですから。で、これ、家庭用とか市販の教材とかは、熱心な人ほど、「ちゃんとやりなさい!」と子どもを追い込みますからね。何のためにやってんだか分かりませんからね。あの中でどれでもいいから、子どもだけがわかって、大人でも分からないようなものなのに、分かっちゃった、ていうのがあったら、「あんたいいわねー。すごいじゃない、お母さんこんなの全然できないわよ」なんて言ってあげるとですね、世界で一番大事な母ですから、お母さんが認めてくれたらもう、「僕なぞぺーやりたーい」っていう風に変わっていきますから。この辺の持って行き方が、勝負だと思います。
(臨場感を伝えるために、あえて話し言葉のまま掲載しています)