『心を伝える道具』2013年12月
「ことばが先にある」
感ずる心を育てることが、幼児教育では大切なことのひとつです。人格の土台をつくり、こころの教育をすることがつまり、幼児教育の目的とも言えます。
では、感性・感受性を育てるにはどうしたらいいのでしょう。実はとても簡単です。大人たちが、心に思ったことを、その場で口に出して言うことです。「きれいだね」「寂しいね」「面白いね」「不思議だね」と。
先日 Gallery okarinaBの写真展に来てくれた親子がたくさんいました。まだ生後数ヶ月の赤ん坊に「わあ見て、桜だよ。まだ見たことないね」「ほら、夕焼け。綺麗だねえ」「すごいねえいろんな色があるね」…としきりに話しかけるお母さん。それを見て私の父も、2歳の孫を毎朝膝に乗せては、新聞に出てくる写真を見せながら「鶴やで、かっこいいなあ」等とやっていたのを思い出しました。
心は、ことばによって伝えられます。優しい言葉には優しい心が、温かい言葉には温かい心が、思いやりの言葉には思いやりの心が、そんなつもりはなくとも、受け取った側にそれが育っていく。意地悪な人が意地悪な言葉使いをするのではありません。そしてことばは、心だけでなく、顔つきさえも変えてしまいます。(そういう意味で人は実は見かけだと言えるかもしれません)
ことばが、いつも先にあるのです。
自分の気持ちを素直に表現すること。感動を「声に出す」こと。それには、感じ、感動し、気づくことが必要です。子どもたちは聞いていないようでいて、ことばを耳からしっかりと受け取っています。
ことばはその人の心を伝える道具。そんなつもりで、我々大人たちは子どもたちに接していきたいものです。