西郡コラム 『子どもたちへの講演 6』

『子どもたちへの講演 6』 2014年3月

今日は学習する前、学習への取り組み方、準備についての話をしましょう。教室に入ります。そこで何をしますか。そうですね。授業の準備、筆記用具、教科書、ノートなど今日の授業に必要なものを用意します。なぜ、準備するの。簡単ですね。授業を始めます、という時間になってから準備するのでは、授業の開始が遅くなる。そうすると、あなたたちの学習する時間が減るということになります。もちろん、準備は事前に、前日の寝る前まで。準備する時間を決めてしまう、これも習慣です。明日、何が要るのかな、立ち止まって考えてみてください。想像力ですね。忘れ物をすると、だれが一番困るか、それはあなた自身です。自分の学習道具は自分でそろえる。

筆記用具を確かめてみましょう。鉛筆は何本入っていますか。六角鉛筆を5,6本は用意しておきたいですね、削ってありますか。シャープペンでもいいですかという人がいます。確かにシャープペンは鉛筆より経済的です。しかし、小学生が鉛筆で書くのは手先の運動の訓練になるからです。皆さんの書く一字一字がむらなく、一定の大きさ、筆圧で、すらすらと曲がらず、よりはやく書けるようになるまで、六角鉛筆で書く。しっかりと正しい鉛筆の持ち方ができる、書けるまでは、シャーペンはよした方がいい。小学生のうちは六角鉛筆で十分です。特に、シャーペンを分解する、カチカチ鳴らす、クルクル回す手遊びの習慣がある人は、まずは鉛筆です。

赤鉛筆は筆箱に入っていますか。赤ペンでも構いません。高学年になると赤入れが多くなる、すると赤鉛筆だと芯がすぐ丸くなるから赤ペンでもいい。シャープペン同様、ペンだとすぐに分解する人がいます。机の上が赤インクだらけ。ノックをすればペン先が出る仕組みはどうなっているのだろう、これは以前にお話しした好奇心ですね、好奇心が旺盛なのはいいことですが、授業中だと、ただの手遊びにしかなりません。せいぜい一本分解すれば、仕組みはわかるでしょう。他のペンも大概同じ仕組みです。

では、どうして赤鉛筆(赤ペン)が必要なのでしょうか。そうです。これも以前にお話しした向上心です。よりよくするため。自分が書いたものを、忘れていた、出来なかった、間違えていた、もっとこうすればよりよかった、だから赤を入れる。鉛筆で書いた黒と見分けやすくする。できたことは、もういい、自分ができない、わからない、だから学習する。学習の本質は、赤鉛筆(赤ペン)で書いたところにあります。紙面が赤でいっぱい書いてあることを嫌がる子がいますが、逆ですね、赤でいっぱい書いてあるのはいいことなのです。そこが学習ですから。

スクールFC・学習道場の受験生(最終学年)では、青ペンも持っています。通称「青コメ」。赤入れしたところに、さらに青ペンでコメントを自分で入れることです。なぜ間違えたのか、この問題のポイントは何なのか、どうすればできるようになるのか自分で考えて書く。コメントですから言葉にするわけです。皆さんもお判りでしょう。言葉にする、というのは大変なことです。でも、あえて言葉にするのです。これは、次の学校に進学しても、その後の社会に出ても必要な力になります。

他の色ペン、蛍光ペンは必要でしょうか。基本的には、鉛筆、赤鉛筆(赤ペン)、受験最終学年の青ペンだけで十分です。色ペン、蛍光ペンを使うことで、学習が楽しくなる、書いたものが見やすく頭に入ってくる、というものでしたら持っていても悪いとは言いません。「本末転倒(ほんまつてんとう)」という言葉を知っていますか。手段と目的が逆になってしまうことです。色ペン、蛍光ペンで書くというのは手段、目的は内容を理解するため、頭に入れることです。これが、色ペン、蛍光ペンで書くことで満足してしまう、使うことが目的になっているのです。何のため、を忘れないようにすることです。

消しゴムは、どうでしょう。基本的には必要ありません。ここまでの話を聞いてもらえれば、なぜ、必要ないか分かってきますよね。自分が書いたものは、残す。間違えならなおさら残す。二重線を引くだけでいい、消しゴムで消す時間も省けます。私が消しゴムを使わせるのは、落書きを消させるときだけです。

ノートに書くのは、忘れるから残し見返すため、自分の頭をビジュアル、目に見える形にするため、そして自分の発想を豊かにするためです。きれいに書かれたノートは、見やすい、書かれた紙面が頭に入りやすい。きれいなノートにどんどんメモを書き込む。赤ペン、青ペンで話したことと同じ、自分のために書くのです。授業ノート、演習ノート、ことばノートなど、それぞれノートの目的と使用方法は各教科授業で学びます。

教科書、テキスト、プリント類は学習内容をまとめたもの、編んだものです。基本の学習です。基本というのは、これらに載っている学習内容が考えるもとになる、算数でいえば公式、考え方のルールです。覚えてください、使ってください、というものです。何度でも読み返して、理解を深めます。学習はこれらにそって進んでいくわけですから、当然、忘れては困ります。

授業前の準備、何が必要なものか、なぜ必要か、忘れてはいけないのか、分かってもらえましたか。あなたにとって大切な学習の道具、あなたの自身のもの、だれのものでもありません。だから、あなたの名前を書きます。ものは、あなたたちでは買えません。お父さん、お母さんが働いて得たお金でしか買えません。現在は、使い捨ての時代、消費社会、ややもすればものを大切にしない傾向がありますが、学ぶ身である以上、ものは買えない、大切するのは当然のことなのです。学習する道具がある、学ぶ場所がある、学ぶ喜びと感謝、これが学習の準備です。

西郡学習道場代表 西郡文啓