『命』2014年12月
最近、『命』について深く考えさせられる出会いがありました。女優、北原佐和子さん。『たった一つの命だから…』このあとにあなたはどんな言葉を続けますか。というメッセージ集のような本を朗読されています。偶然、中学生になった花まるでの教え子のお母さんのご友人ということで、縁あってその朗読を聞く機会に恵まれました。
さて、朗読中、泣きました。久しぶりに、止められず。決して感動ではなく、かといって悲しみでもなく。でも、その話を聞いて自身の感情を素直に表現するとただ涙が出てきたという不思議な感じでした。生前、命の灯が消える直前で書いたことが想像できるもの。ご遺族の方が悲しみの中で書かれたもの。抗いようのない自身の運命を受け入れた強さを感じさせるもの…。どれも、綺麗ごとではない、何のてらいもない言葉がただただ綴られていたからでしょうか。その時の私の感情は非常に説明しにくいのですが、今笑っていることが、今悩んでいることが、今生きていることが、全て当たり前ではないということを強く思い出すきっかけとなりました。
子ども達や保護者の皆様の目に私はどう映っているのでしょうか。「先生のように逞しく育ってほしい」そんなお言葉を連絡帳等で頂くたびに本当に嬉しく思います。ただ、実はそんなにできた人間ではなく、ズッコケっぱなしの今までで、子ども達や、保護者の皆様、そして仲間たちに支えられてここまで生きてきています。数年前、自身のだらしなさ故の離婚や交通事故、病気での入院等が重なった事もあり自暴自棄になって良からぬことを考えた瞬間もありました。あの時、生きることに、何とかしがみついた理由。
当時、弊社に転職をしてきた21歳の女性がいました。決して学校の成績が良かったタイプではなく、ただそれを補って余りある、情熱と元気、そして子ども達が大好きというオーラが背中から湧き上がってくるのが見えるような魅力に溢れた人…。私が主導で行った研修を修了し、いよいよ教育現場に立とうとした矢先に異変が。研修修了直後の年末に体調を崩し入院。20代の女性ではほとんど前例がない大腸がんに侵されていました。何度も見舞いに行きましたが、到底病に侵されているとは思えない程の笑顔で「私が負けるわけないじゃないですか!」と大笑いし、逆に心配している我々を元気づけてくれていました。4か月におよぶ入院生活と手術を経て退院。誰もが彼女が完全復活することを信じて疑いませんでした。その年のサマースクールにも救護リーダーとして私のコースに参加し、持ち前の元気で子ども達に最高の経験というプレゼントを与えてくれたことが今思えば彼女が生きた証だったと思います。しかし、夏を越えると容体が急変。翌年の1月7日に23歳の若さで帰らぬ人となりました。亡くなる直前、12月末に見舞いに行った際も、息は絶え絶えで意識も朦朧ながら子ども達の前に再び立つことを生きる糧とし、同期の仲間を心配し、花まるに出会えてよかったことを一生懸命話してくれました。多分、彼女の生き様を見ていなければ、私は真っ向から問題に向き合えるような人間にはなっていなかったと思いますし、生きていることの意味を見失ったままだったでしょう。
今、この世で生きているだけで、奇跡的なこと。縁あって人と出会えることもまた奇跡。
生きられなかった彼女の分まで、たった一つの命をこの仕事に捧げ、一人でも多くの子ども達に生きることの意味を伝えていければと思います。
相澤 樹