Rinコラム 『エポックメイキングな一日』

『エポックメイキングな一日』2014年6月

子どもたちのテキストと全く同じ課題を前に、神妙な面持ちで取り組むお父さんお母さんたち。
 Iキューブを使った簡単なゲームに、のめりこむ大人たちの姿がそこにはありました。
―過去の自分よりもできていたか、にいつも目を向けられるか。誰かと比較していては一生幸せになれない。幼児とは、認めてもらいたい生き物。自己肯定感を育む時期は今。全く別の生き物である彼らの本質を、知ることで普段の言葉かけが変わってくる。
 運筆のページ。「1,2,1,2、いーち!」のかけ声に、「こんなに早いの?」という表情を浮かべる方も。「大人でさえ、誰もが線の上をなぞることなんて、できていませんでしたよね」の言葉に、どっと笑いが起きる。「落ち着きがないのは、心臓が大人と違うから。振り返りができないのは、時間軸をさかのぼれないから」幼児の特性を踏まえながらの、花まるの授業を存分に体感してもらいます。「いかにテキストの意義を理解していることが大切か」そのことにも気づいていただくことができました。
 宿題体験。ハサミを持つ手は真剣そのもの。紙を切る音だけが流れます。「チームで助け合ってお願いします!」というと、「あ、ありがとうございます!」と嬉しそうな声。「できた!」の姿は、大人なのにまるで花まるっ子そのもの。
―チームワーク、知の共有、切磋琢磨。実体験の大切さ。空間認識力を、思考力を、工夫する力を、手を使って伸ばすとはこういうこと。自分のものを自分で用意、管理する。責任を持つことから、主体的な学びがスタートするということ。
 ネガティブワードをポジティブワードに変える「ほめぺ~」。あるクラスでは「ふざける」を、「幸せそう」と書いたお母さんがいたそうです。確かにふざけているときの子どもの顔は、充実感に満ちて幸せそう。
―どんな人間も、二面性を持っている。気の強い子の母は「お友達にもきつく言って心配」ネガティブさはそのまま、ポジティブさに言い換えられてしまう。わが子の“いい面”を、探すことができているだろうか。
 「よい子とはどんな子?」「どんな子に育ってほしい?」「花まるかあさんワークシート」での問いかけは、そのまま、自分自身に向き合うことにつながります。―自分のコンプレックスをわが子に投影したり、勝手な願いだけが先行したりしてはいないだろうか。わが子が持っている、よい性質、のめりこむほど好きなこと、得意なことを見つめているだろうか。「種は芽が出る芽は伸びる。そういう風にできている」のです。大切なのは、芽を摘まないこと。
 花まるの教室で、我々が日々行っている「幼児の特性」を踏まえた、「本質的な」学び、そして「認める、褒める言葉かけ」。それらをたっぷり1時間以上体感していただいた保護者の皆さんは、目が輝いて、頬は上気し、頭がどんどん回転しているとき特有の、あの、いつも教室で子どもたちが見せるやりきったときの表情と同じでした。そんな「大人たちの真剣な姿」を、子どもたちにも見せたかった。仕事だって何だって、真剣にやるからこそ、そこに面白さややりがいが見えてくる。人生って、そういうもの。大人が背中で見せる真剣さは、生きる力そのものだと思うのです。
 362名の保護者の方に参加いただいた4月13日の「花まるメソッド勉強会」。日曜の朝早くから参加いただき、本当にありがとうございました。公教育への参入もそうですが、ずっと思い描いていた、「保護者の方々にも勉強していただくことで、日本の教育に対する大人の意識をさらによいものに変えていく」そのための、我々にとってはエポックメイキングな第一回目の勉強会が終わりました。次回は10月26日。3回完結のコンテンツですが、皆様のアンケートをもとに、さらに充実した内容でお送りしたいと思います。「花まる哲学」が、皆様の子育ての一助になれれば幸せです。
 奇しくも、その日の午後は、高濱による「20歳になる君へ」の講演もあり、10年以上前の教え子が大学生となり、花まる講師として戻ってきて、偶然再会をする、私にとってうれしい日でもありました。
 そうやって、少しずつ確実に、未来の子どもたちのためになる世の中に変えていけるように。祈りにも似た思いで、日々目の前の子どもたちと向き合うだけです。