Rinコラム 『走りながら考える人』

『走りながら考える人』2015年8月

あなたは、①考えてから走る人 ですか?それとも、②走った後で考える人 ですか?もしくは、③走りながら考える人 でしょうか。
 正解があるわけではないのですが、①は計画性のある人、②は反省をする人、③は計画もせず反省もしない人(だが行動力はあるタイプ)と言えるでしょう。
 ここまでは大人の話ですが、乳幼児は常に「思考と行動が同時」ですから、「走りながら考え、考えながら走る」人です。「走る」というのはたとえ話ですが、計画性もなく、反省もしない乳幼児の日常の行動に当てはめてみると、納得できるはずです。
 設計図を書いてから積み木で遊ぶ子はいませんし、できあがってもまた崩してまた一から遊ぼう、ができるのが幼児。叱られても、叱られても、ケロッと忘れて同じ失敗をするものですし、「過去を振り返る」=「やり直し」は大の苦手分野です。「だからさっき言ったじゃない!」や、「もう!何回言ったら分かるのよ!」といった叱責は、幼児にとって意味がないのは、有名な話ですね。
 「計画性がなく、反省しない」加えて「落ち着きがない」のが、幼児の本質的な特性ですから、これを子どもの欠点と見るのも間違っています。このことは子どもの興味や好奇心、そして行動力にも深くかかわりがあることです。
 私たちが教室で、やり直しをさせるのではなく「次のページ(未来)をもっと上手くできるかな」という声かけをしたり、長々と導入をせず、「今やりたい!」という子どもたちの行動力(思考と行動が同時であるという性質)にあわせた授業展開をしたりするのは、こういった幼児の本質を踏まえているからなのです。
 十全に遊びつくし、立派な幼児の時代を過ごせた子たちは、(グレーな時期を過ぎて)10歳以降、立派なカエルを目指し始めたころには、「復習(振り返り)」ができ、より鍛錬を好む時代へと突入していけるのです。
 ちなみに、なぜ子どもが落ち着きなく見えるのか、そのメカニズムを知っていますか?子どもの心臓は小さく弱く、そのためじっとしている状態では血液を頭の上まで押し上げる力がありません。それを補っているのが体中の筋肉。血液を多く必要としている脳の活動を妨げないよう、しょっちゅう動き回って筋肉を収縮させ、脳に血液を持ち上げようとしているのです。落ち着きがないように見えるのは、脳が活動をしていたからなのですね。

次回は「兄弟の優先順位」についてお話します。
 
レロ由実