Rinコラム 『向かい合っては学べない』

『向かい合っては学べない』2015年5月

2015年度もコラムを担当させていただきます。今年はさらに幅を広げて、ざっくばらんに幼児教育と芸術のまじわったところに見えてくるものについて語っていきます。もちろん、読者の皆さんにとって楽しい子育てへのヒントになるような、子どもたちへの関わりのヒントー花まる哲学のエッセンスをお伝えしていくつもりです。また一年間どうぞよろしくお願いします。
 さて第一回目の今回は、我々にとっては基本中の基本、幼児と触れ合う機会のある人にはぜひ知っておいてもらうと損はない視点、「(幼児は)向かい合っては学べない」についてお話しましょう。

洋服を着せたり脱がせたり、靴や靴下をはかせたりするときに、子どもと向かい合ってしていませんか?何かをしてあげる気持ちでいるならいいのですが、教えるつもりの場合は、実はこれではうまくいきません。幼児は向かい合っている相手からは学ぶことができないのです。
 洋服の場合、お家の人が子どもの後ろに回って着せてあげます。後ろから洋服をもって袖を通し、子どもの前に手を回してボタンを留めてあげるのです。靴下や靴も、後ろから手助けします。すると数回の経験で自分でできるようになります。自分と同じ方向を向いている相手からは、何でも学んでしまう幼児の面白い特性です。
 絵本を読んであげたり、折り紙やハサミの使い方を教えたりする時も、おうちの人が同じ方向をむいて、たとえば膝にだっこしてあげるのが一番良い方法です。花まるの教室でも、特に幼児には、先生はわざと黒板のほうを向き(=子どもたちに背を向けて)、同じ方向を向いて教えるのは、そのためです。家庭で何かを教えようというとき、あれ?なぜか伝わらないな、と感じたときは、「同じ方向を向いて」を試してみるとよいでしょう。
 特に、文字を追っていくうちに自分で読むことができるようになる、その前の段階の読書=読み聞かせは、「膝の上で、文字を一緒に追いながら」が良いでしょう。言葉のシャワーをたくさん浴びた子は、ある日心のタンクがいっぱいになったときに、自分でどんどん読みたがるようになるものです。

次回は「子どもに話しかけるときには」についてお話します。
 
レロ由実