『「花まるタイム」初日』 2016年6月
4月、昨年度開校した2校に続き、新たに3校、計5校で「武雄花まる学園」が始まる。「花まるタイム」理念や指導法を共有、確認する研修を、昨年度末に行い、子どもたちも交えた実践練習も終えてはいる。子どもたちも、先生も経験済でも、より花まるメソッドを徹底させるために、再度、職員研修を行う。赴任転任式、始業式、入学式と年度開始の多用ななか、研修は一度しか行えない。そして、これは転任してきて、初めて「花まるタイム」を行う職員のための研修でもある。
「花まるタイム」は週4日(月、火、木、金曜日)の朝の時間に、音読、図形、計算(サボテン)、書写(あさがお)を15分間で行う、学校の正規の学習プログラム。学校の先生すべてに花まるメソッドはすぐに適応できるわけではない。大きな声を出す音読、「右手にA、左手にB、両手にもってカチカチ」独自の提示の仕方、振り返らない、やりっぱなしの計算(サボテン)、より正確に、早くを求める書写(あさがお)は、なぜ、この方法をとるのか、どんな考えに基づいているか、理念を共有して、実際に司会進行ができるまでには時間がかかる。見切り発車の感は否めないが、日々実践、よりよくしていくことで時間をかけて「花まるタイム」を作り上げていく。
辞令を受け、4月に転任してきた先生にとって、朝の時間帯に「花まるタイム」をやります、と言われても、何をどうやればいいのか、ゼロからのスタートだ。花まるの考え方(理念)、やり方(指導法=子どもたちへの渡し方)を、実際の映像を交えながら、説明する。頭でわかっていても、動きが伴うか、練習なしで、初日を迎える。しかも、地域支援員が教室に入り、音読を一緒にやり、子どもの「サボテン」「あさがお」に花まるを付けて、子どもたちを励ます。地域の人たちが見守る中で、花まるタイムを行うことになる。
「花まるタイム」の初日を迎えた。3年生の学級は、転任してきた、教師3年目の、若い女性の先生が受け持つ。緊張でこわばった表情は、子どもたちにも伝染する。硬い、重苦しい雰囲気を感じたので、「先生、失敗OK、思い切ってやってください、笑顔、笑顔」とだけアドバイスをした。この若い先生には酷だが、自分で何とかするしかない、覚悟してもらうために、あとは何も言わず、あなたの教師人生に絶対プラスになるはず、と確信して、温かく見守るだけにした。
四字熟語の音読が始まった。大きな声で一生懸命に先生が音読する。それに応えるはずの、子どもたちは固い。声が出ない。先生もそれを感じたらしく、挽回しようと、さらに大きな声を出す。「キューブキューブ」も、「できた!」子どもたちの表現も中途半端、先生がポイントを上げて盛り上げようとするが、小さな声、表情で「イェイ!」。困った表情を出すまいと、こわばった笑顔で先生は返す。
必死に「花まるタイム」を行う先生をみて、私から何も言うことはない。このまま継続するだけ。一生懸命にやる先生は、いつかできる。そして、子どもたちは感動する。
西郡学習道場代表 西郡文啓