西郡コラム 『山村留学事業30周年』

『山村留学事業30周年』 2017年1月

長野県北相木村教育委員会が開催する、山村留学事業30周年の記念イベントがあった。村のふるさと創生の会議に出席している、弊社同僚の新井と私が招待され、出席した。式は村長の祝辞から始まり、事業開始時の村長、議会議長、保護者代表、卒園生代表の挨拶に続いて、山村留学の30年の歩みが紹介された。
 昭和62年、少子化に伴い児童数減、学校存続のため、村外から児童を村に“留学”してもらう、山村留学事業を開始する。当初は、山村事業を全国展開する業者に委託していたが、児童が集まらず、採算が取れないため、平成21年をもって業者は撤退、山村留学事業を辞めざるを得ないところまでくる。議会は撤退を決める。
 ここで、学校はなくなると村の文化が廃る、子どものいない村に村の将来はない、当時の教育長と校長が山村留学事業の存続のために奔走、議会を説得、他地域で山村留学に携わっている人を招聘、村直営の山村留学事業として存続させる。そして、学校教育の中身を充実させないと、魅力ある学校にしないと村に児童は来ない、花まる学習会との提携がはじまった。
 30年といっても紆余曲折、学校存続のための、ひいては村の将来のための思いが詰まった山村留学事業であることを再確認するイベントでもあった。
 花まる社員が学校での授業を行い、学校の先生が花まるの授業を関東まで見学に来る。花まるメソッドを学習の土壌としてとらえ、積極的に学校教育に取り入れる。「花まる・北相木小学校」として、学校も花まるも新たな学校づくりに挑戦する。山村留学の定員もほとんど花まるの会員で占める。昨年、山村留学の紹介するイベントを開催したところ、多くの方が興味を示された。自然環境のなかで、テレビもゲームもない、親元離れた土地での生活。信頼できる施設、人材がいてこそ、子どもを預けられる。都会の学校生活に疑問を感じていた方が、山村留学にいらした。学校と教育委員会(山村留学)と花まるが三位一体となった、新たな教育が行われている。長野県がモデルとして、「小さな村の大きな教育改革」の北相木村に注目している。
 しかし、過疎化、少子化、高齢化は全国の地方の問題、この山村留学事業が、いつ、廃止になってもおかしくない。山村留学で児童数は確保できても、村在住の子どもが少ない、いなくなる、そこに村の予算を使っていいのか。近隣の過疎自治体と協力して、学校を統合、スクールバスでも走らせて通学させた方が、効率よく学校運営ができる。何より、子どもたちのためではないか。過疎化の地域に学校を存続させることに固執する必要があるのか。税金をどう使うかを考えても、学校の統廃合は時代の趨勢だろう。
 「学校がなくなると村が廃れる。子どものいない村に将来はない」と懸命に“あがく”自治体に応援したくなるもの人情。魅力ある学校、地域づくりに花まるは応援する。ただ、応援するのではなく、地方の教育が日本の人材供給の場になっているといえるような内容を提供していく。

西郡学習道場代表 西郡文啓