松島コラム 『親のかかわり方』

『親のかかわり方』 2017年5月

2020年の大学入試改革を目前にして、中学受験への関心も高まっているようです。
 最近では、受験に関する雑誌・書籍も増える中、「下剋上受験」がテレビドラマ化されて話題になりました。あまり観る機会はありませんでしたが、現場にいる人間にとっては極端な演出や脚色も多かったように感じられ、どちらかと言うと中学受験のイメージを悪くしたのではないかと心配になりました。しかし、テレビドラマとしては、笑いや感動もあり、その点では楽しめる内容になっていたのかもしれません。
 実際の中学受験は決してあのようにドラマチックに展開するものではありません。親子のかかわり方も千差万別です。それぞれのご家庭にそれぞれの受験があります。だからこそ悩みも尽きないのですが、実際は同じような不安を抱えていることも多いのです。
 そんな中学受験を目指すご家庭に向けて、この度、拙著「中学受験 親のかかわり方大全」を実務教育出版から上梓させていただきました。それぞれに異なる受験環境の中でも、保護者の方が持つであろうと共通の悩みや疑問について網羅的に触れた内容になっています。その冒頭の部分をご紹介させていただきます。

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中学受験に30年近くかかわってきました。その間、数多くの受験生とその保護者の方に出会うことができました。どれも一つとして同じ受験はありませんでした。夫婦の意見の対立、反抗期による親子げんか、一向にやる気を見せないわが子への苛立ち、成績不振によるあせりと怒り、言ってはいけないと思いながらもついつい口に出してしまうNGワード、そしてそのあとはいつもの後悔。
 「いつになったらわが子は本気になるの?本当に受験できるの?このままでいいの?」
 実は、第一志望校に見事合格、周りからは順風満帆の受験だったように見えても、その裏では様々な悩みや問題を抱えていたご家庭ばかりでした。しかし中学受験はそれが普通です。なぜなら中学受験は親のサポートが不可欠である一方で、その準備期間が子どもの自立の時期とちょうど重なるからです。親子の関係、その距離感が難しいのが中学受験です。
 こう考えてほしいのです。親子が一緒に何かに向かって努力することは、一生の中でもそうあるものではありません。もしかしたらこれが最初で最後かもしれません。楽しいことも苦しいことも親子として同じ時間を生きてきた証しであり、今はいろいろあるけど、どれも我が家にとっての大切な思い出になるんだ、と。
(中略)
「幸せな受験」をした子どもは進学後も着実に伸びていきます。12歳をピークにせず次のステップでもさらに輝き、成長していきます。そうなって初めて、受験はゴールではなく通過点であると気づき、その意味を改めて考えるのだと思います。人生を42.195㎞のマラソンに例えるなら、小学生時代は最初の5㎞くらいを走りはじめたばかりです。どんなスタートを切るのかは大切ですが、それがすべてではありません。いくらでもこの先勝負どころがありますし、人生の一番つらい上り坂でリタイアしないためにも、将来を見据えた走り方をしなければなりません。親はその伴走者であり、応援団長です。
(中略)
 この本では、中学受験をお考えのすべての保護者の方に向けて、受験勉強を始める前から合格後までの間に起こりうる様々な問題や悩みに対して、その解決策を紙面の許す限り盛りこみました。私が実際にご相談いただいたものばかりですので、読者のみなさんにも当てはまる内容があると思います。また学年、学期ごとにまとめていますので、将来中学受験をお考えの方にも、これからの話として参考になるはずです。 
 この本が、「幸せな中学受験」を目指すすべてのご家族にとって、少しでもお役に立つものになればこのうえない喜びです。

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これからも皆様の不安や悩みに寄り添える塾として進んでまいります。よろしくお願いいたします。