『プラス思考?―よかったね運動』2015年11月
我が子が何か失敗をしたときに、あなたはどのように対処するでしょうか。
例えばおもらしをしてしまったとき、忘れ物をしてしまったとき、転んで膝小僧をすりむいてしまったとき。「駄目じゃないの」「何回言ったら分かるの」「本当に困った子ね」…などとマイナス思考の言葉を言っていませんか。何気ない大人の言葉が子どもの心に突き刺さり、「自分はダメな、困った子」なんだ、という間違ったレッテルを自分で自分に貼ってしまいます。
子どもが失敗をしてしまったとき、周りの大人は平然とした表情で対処しましょう。そしてすべての処理が終わった時に「よかったね」と言ってあげてください。
年中さんクラスの子どもたちですと、ときどき教室でおもらしをすることもあります。夢中になって授業を受けていると、「トイレにいきたい」ことを忘れてしまうこともあるのです。先生がおもらしの後始末をしてあげてから、再び教室に送り出すとき、必ず「よかったね」ということばをかけます。「残りの授業も受けられるね、よかったね」と。小学生でも、急に気分が悪くなって授業中もどしてしまう子もいます。そんなときも後始末が終わったら必ず「(大変だったけど)もうすっきりしたね、よかったね」と伝えるのです。
なにか事件が起こったとき、本人も意気消沈している場合がほとんどです。「つらかったね、びっくりしたね」と彼らの気持ちを受容・共感して、気持ちを代弁してあげることもとても大事ですが、どんなに悲惨な状況でも、最後に必ず「よかったね」と付け加えてあげてください。そうすると子どもたちは魔法がかかったかのように「うん」と言います。「あぁよかった」という気持ちから、自然に「ありがとう」ということばが出てくることでしょう。つらかったはずのことが、最後は「よかった」で終われる。そうすると自然に、何かが起こっても、その出来事の中から、いい面を探そうとする人になります。どんなにつらい状況でも、そのことに隠された意味を見出し、感謝ができる大人になるのです。
7月中旬、8年半苦楽を共にした愛犬を、突然の事故で亡くしました。しばらく呆然自失の状態でしたが、紆余曲折を経て、今我が家には生後4か月の仔犬がいます。すっかり忘れていた犬育てを一から。先代犬が仔犬時代には「ダメっていったじゃない!」と叱ってしまう度、「私今NGワードを言った…?!(プロとしてはありえないけれど、身内にはこうなるものなのね)」と自分に驚いたものですが、最近の私は失敗したチビ助さんに「怖かったね、びっくりしたね、大丈夫だね、すごいね」と最後は失敗すらなかったことのようにして、褒められた記憶で終わらせるようになっていました。無意識の「よかったね」運動がすっかり身についていたらしく、この8年でどうやら私も成長していたようです。
レロ由実