『整理整頓された学習』 2016年3月
所用の5年担任に代わり、朝の「花まるタイム」を私が進めた。全校、開始の合図とともにことわざ、慣用句の音読を始める。
毎朝(月、火、木、金曜日)の「花まるタイム」も10ヶ月が過ぎた。長くやれば形は定着するものの、逆に、毎日やると慣れが生じリズミカルな音読の心地よさも薄れ、惰性の学習になる。日々新鮮、は相当意識的に取り組まないと難しい。5・6年生にもなると、低学年のように先生を素直に真似て声を張ることも少なくなり、口を開けることが面倒になり、音のはっきりしない子どもも出てくる。成長段階の一つ、当然のことと許してしまうと、花まるの音読をやっていますよ、だけ、形骸化する。
しかし、このクラスは全員が姿勢よくしっかりと声を出し、音読に向き合っている。今でも新鮮だ。声を出すことは心身の解放、スラスラ読むのは読解の基本、相手に音をはっきりと伝えることはコミュニケーションの第一歩、高学年ほど音読は重要になってくる。担任が花まるの音読の趣旨を理解して、音読に向き合う姿勢をクラス全員に定着させた。
「花まるタイム」は、朝の15分間で「音読」「図形(キューブキューブ)」「サボテン」「あさがお」を一気にやってしまう。音読をテンポよく、リズミカルに終えると、クラス全員音読教材をさっとしまって、即、キューブキューブを出し、私が提示する問題に取り掛かる態勢を素早く作る。次に「サボテン」では静寂、集中力を最大限に発揮してひたすら問題に取り組む。答え合わせも小気味好く終え、最後の「あさがお」を取り出す動きには無駄がない。
300字弱の文章や詩、俳句を3分で書き写す「あさがお」は、正確にはやく、そしてより多くを覚えて一気に書くことを狙いとする学習だ。一定の字の大きさでスラスラとまっすぐに書きあげるには研ぎ澄まされた集中力を要する。教室全体は緊張感のある静寂に包まれる。内面の精神力だけではなく、場の緊迫感が精神力の鍛錬を手助けする。机間巡視して驚いたのは、クラス全員の字一つ一つが一定の大きさで逞しく、しっかりとしかもスラスラと書き上げられていて、美しい、ということ。
音読、キューブキューブ、サボテン、あさがお、それぞれが意図する学習内容を咀嚼して学校現場に適合させるだけではなく、この四つの学習を一セットとして「花まるタイム」15分を一作品に仕上げる。間の無駄を省くことは、更なる集中力を生み、学習の段取りは生きる力を高める。整理整頓された学習があった。
しかし、一日ではできない。日々の授業やクラス活動、学校生活全体で習慣化しているかどうか。体育の時間に誰もいない教室を見ると、きちんと畳んである普段着(男子)が机の上に並んでいる。万事。この子は遅いんですよ、この子はできないんですよ、といった個人の資質の問題に逃げず、クラス全員がやれることをやるに徹する。学校は誰でもやれることをどこでもいつでも毎日やれる。だから第二の学力、学習習慣は身につく。
西郡学習道場代表 西郡文啓