『正解のない世界で』2016年6月
「(できる限り)手を出さない」
「作業に没頭しているときは声をかけない」
「上手だね、を使わず認めるーあなたがどう感じたか、を言葉にしていく」
「これは何?と言わないー表現された何かが、具体物である必要はない」
「自分の価値観を押し付けないー相手が一個の表現者であることを尊重する」
「(あなた自身も)自分はどうしたい、に向き合い続けてください」
3月に沖縄で、未就学児のための表現のワークショップ指導を担当しました。まる一日、8時間の、親子一緒にできるコンテンツ。私の創作の引き出し(もちろん花まる年中長コースの思考実験の内容も含まれます)の中から、ありとあらゆるテーマを、いつでも取り出せるようにして意気揚々と臨みました。(この時の素敵な事例は別の機会に譲ります)
普段は、子どもたちだけの世界で行う創作の時間。保護者が参加するためには、大切な指針を共有してもらう必要がある、と言語化したのが上の6項目:「Atelier for KIDsで大人が子供と関わるときの基本ルール」です。
表現活動に没頭している間、子どもたちの中でいったい何が起きているのでしょう。
それは「自分との対話」です。「もっとこうしたい」という内なる欲求を確かに感じとり、自分自身と向き合い始めるのです。「誰かのために」ではない、「自分のための」制作の時間。それが「上手であるか」どうかではなく、表現する過程そのものに夢中になっているのです。「それが何なのか」を知りたくて制作しているときもありますし、創作中のハプニングから発想転換し、うまく作品に昇華することもあります。
私のアトリエでは、子どもたちの鼻息だけが、ただ流れている瞬間が何度も訪れます。‘純粋でひたむきな「意欲」を、大人の質問で遮らないこと‘がもっとも大切なことで、指導者側の感性が問われる点です。どうしても困ったときは、共同制作者としてのスタンスで寄り添い考え、「どうしたいのか?」をとことん掘り下げ、時に意見を戦わせます。それが「相手を一表現者として尊重」し、「どう感じたかを言語化していく」過程です。
人に言われてやる何かではなく、そもそも正解のない世界で、自分自身の正解を探し続ける。人生は旅のようだと昔の人は言いましたが、「Atelier for KIDs」の創作の時間は、社会に出たときの確固たる自分を育てているようです。この先の人生を有意義なものにしていく力を培っている。創作とは、究極の遊びなのだと気がつきました。(算数脳を育てるために大切なのは外遊びですが)
教育者の視点で、芸術家のこころで、教育とARTの交わるところを世の中に提示しながら、教育の新しい視点を発信していくことが私の使命だと、今では感じています。
RELLO 由実(Rin)