松島コラム 『今からでも遅くはない!』

『今からでも遅くはない!』 2016年11月

6年生の志望校判定模試が本格的に始まりました。最終的な志望校決定の時期ですから、模試の結果にいろいろと悩まれている方もいらっしゃると思います。大手の模試では傾向が偏らないように毎回出題内容を変えてきますから、そのときの得意・不得意が結果に大きく影響することがあります。その点では弱点の少ないオールラウンドプレーヤーのほうが模試では強いわけです。
 しかし、体操競技に例えると、模試は個人総合、入試は種目別競技です。最終的にはこの種目別で結果を出せばいいのです。模試で発見した弱点単元が志望校によく出題されるところなら、そこを徹底的に強化していきましょう。まだまだ伸びます。この段階で第一志望校の偏差値に届いていないからと言ってあきらめる必要はありません。もちろんいろいろな事情で第一志望校を変えることもあります。しかし最後の最後に合格の扉をこじ開けたという事例もたくさんあるのです。
 私が新人教室長時代の話です。どうしても算数が足を引っ張り、第一志望校の合格判定が一度もよい結果にならないまま、12月を迎えてしまった受験生がいました。算数ができない原因は極度の苦手意識です。そもそも算数の勉強時間が足りませんでした。どうしても大好きな社会ばかり勉強して、指示された算数の問題集はのらりくらりと言い訳をしてやってこない。過去問演習も自信がないから算数だけ後回し。担当講師も手に負えない状況でした。私も保護者や本人と何度も面談をしたのですが、私自身の未熟さゆえに彼の意識を変えるまではいかなかったのです。しかし、そうした逃げの姿勢が見える一方で、本人の第一志望校へのあこがれは強く、口では「絶対に受かるから。」と言っていました。
 入試まで残り2ヶ月。算数のメドがたてば、何とかなると思っていた私はあることを思いつき、実行しました。彼の第一志望校に通っている塾の卒業生から、直接アドバイスをしてもらったのです。算数の現状を伝え、「自分の経験談を話してほしい。」と頼みました。その卒業生も最後まで算数にてこずっていたので、通じ合うものがあるのではないかと考えたのです。そしてそれはあっけなく彼の意識を変えました。
 「入試のとき、最初の国語があまりにもできなくて落ち込んだけど、苦手だった算数が意外にできて自信を取り戻せた。その時になってあきらめずに算数をがんばってきて本当によかったと思った。だから今からでも遅くはない。算数をやったほうがいいよ。」という満点のアドバイス。それ以外でも学校生活の楽しさなども伝えてくれたようです。
 外の師匠の影響力は絶大でした。彼はその後社会を封印して、苦労しながらも算数の勉強に取り組みました。もうこの時期には模試がないので偏差値は出ませんでしたが、過去問の点数が少しずつ上がってきたことで、私も手ごたえを感じていました。算数は最後まで伸びる、伸ばせる教科なのです。
 入試の帰りに塾に寄ってくれた彼の言葉が印象的でした。
 「わからない問題も最後まであきらめずに考えた。だからもう悔いはないです。」
 以前の彼だったら本番であっても途中であきらめていたかもしれません。それがたった2ヶ月でこれだけの成長を遂げたのです。そしてその数日後、先輩に合格報告をしたいとやってきた彼の姿はさらに頼もしく、自信に満ち溢れていました。
 ちょっとしたきっかけで子どもは変わります。入試まで4ヶ月。最後まで子どもたちを信じて応援してまいります。