『教育改革はできる』 2016年12月
一年半前、私のような民間人が、しかも学習塾の人間が関東から九州の地へやってきて、同じ公立小学校の職員室で勤務する。公立小学校が通称「武雄・花まる学園」へと、トップダウンの決定で変わる。学校職員はどんな気持ちでこの仕組みを受け入れるのだろうか。いったいどういう“歓迎”をうけるのだろうか。戦々恐々として迎えた勤務初日、「はじめまして!!東川登小学校(*佐賀県武雄市立)へようこそおいでくださいました。どうぞよろしくお願いします。職員一同」A4紙一枚にイラストを添えて、私の机の上に置いてあった。初日に、このメッセージがあった。
そして、一年半、任期途中で去る。去る理由も病気、年度途中でリタイアする迷惑を詫びる挨拶を関係各位に済ませ、こっそり、静かにフェードアウトするつもりだった。
しかし、初年度に赴任した小学校で、急遽、私のお別れ会を朝の全校集会の中で開いてくれた。校長から、児童代表から別れの挨拶をうけ、私の謝意、校歌斉唱と続き、全校児童、職員の作るアーチを潜って、私は退場、お別れ会は終わった。
その後、職員室で最後の挨拶の際に、子どもたちから他の手紙と職員からの手紙をいただいた。全児童99名が一人一枚書いてくれた手紙を束ねた表紙には「西郡先生、お世話になりました!」の文字と学級ごとに撮影した、児童と先生の写真が載っている。一年生から六年生まで思い出の場面とともに私との思い出を綴ってくれた。これ、いつ、書いてくれたの、作ってくれたの?病気で弱っているせいか、年のせいか、目頭が熱くなり、不覚の涙を流すところだった。ちなみに、一人ひとり書いてくれた字がしっかりとしていて力強い。この文集を見るだけでも、毎朝の「花まるタイム」「あさがお」の成果がわかる。
『現三年生が一年生の冬に、「花まるタイム」がスタートしました。はじめは、正直言って、一年生には無理だよ、と思っていました。」でも、西郡先生は「意見は率直に言ってください」「先生方のやりやすいようにどんどんアレンジしてください」とおっしゃっていました。押しつけではなく、本当にいいものを一緒に作っていきましょうという熱意が伝わってきました。それで、ある程度の枠の中で自由にさせてもらいました。実際にやってみると、子どもたちはすんなり受け入れて楽しんでくれました。やればやるほど子どもたちはのってきて、そして、その効果も見えてきました。特に昨年度、算数でつまずきが多かった○○君もサボテンでめきめき力と自信をつけて楽しんで取り組みました。朝の「花まるタイム」があるのがあたり前になってきて、ない日は子どもたちもがっかりする現象も!これまでも、学校現場で朝の時間を活用はしてきましたが、「花まるタイム」のよさを実感することができました』職員一同と書いてある、手書きの手紙をいただいた。
最後の一日の、別れの会、児童の文集、先生の手紙に、教育改革はことごとく上手くいかないという“定説”を覆し、花まるは確実に学校を変えることができる実感を得た。
西郡学習道場代表 西郡文啓