松島コラム 『分散学習のすすめ』

『分散学習のすすめ』 2016年12月

「うちの子は集中力がないんです。どうしたら集中できるようになるでしょうか。」
 こういう相談をいただくことがあります。
 周囲への関心が強く、なかなかじっとしていられない幼児期の子どもは、一つのことを始めたと思ったら、すぐに飽きて別なことを始めます。傍から見ると集中力がないように見えますが、興味の幅が広いために集中できる時間が短いだけなのです。低学年での学習では、一つのことを長時間取り組ませるよりも、短い時間で切り替えて取り組ませたほうが飽きることなく集中力が続く。このことは、花まる学習会の授業で証明されています。家で宿題をやるときも、漢字を10分練習したあとに計算に5分取り組むなど、やることを予め決めて、短い時間でやったほうが効率はいいのです。
 一方で、親としては粘り強く取り組んでほしいという思いもあります。
 先日ある大学受験のプロ講師と雑談していたとき、「大学受験にずば抜けた才能は必要ないよね。最終的には勤勉さと粘り強さだよね。」ということで一致しました。
 実際、私がこれまで教えてきた生徒の中で、泥臭いことを嫌がらない勤勉さ、粘り強さがある子は、中学受験・高校受験でも順当に結果を残し、大学受験でも東大をはじめとした最難関大に合格しているように感じます。
 粘り強い子に育てるにはどうしたらいいのか。それは、「我慢する経験、思い通りにならない経験をどれだけしてきたか。」に尽きると思います。
 「欲しいものが簡単に手に入らない。サッカーでレギュラーになれない。水泳の級が上がらない。ゲームやテレビに制限がある。一度始めたことは簡単にはやめさせてくれない。」
 こうしたいわゆる負荷のかかる環境の中でそれを乗り越えてきた子どもは、簡単にはあきらめない、つまり粘り強い子になるのです。子どもの成長には一定の不自由さが必要なのです。
 「いやだったらやめさせればいいじゃないか。」「そんなに欲しいんだったら買ってあげてもいいだろう。」ではなく、もう一度将来のわが子のために、その判断が良いのか、ご家族で話し合うことも大切です。たとえ自分の思い通りにいかなくても、またその結果何度か失敗しても、あきらめずに続けていく力こそ、どの世界でも通じる最強の生きる力だと私は信じています。
 さて、冒頭の宿題を細かく分けてやる方法ですが、高学年でも有効な方法だと思っています。
 塾のない日に算数なら算数、国語なら国語の一週間分の宿題を一気に片づけているお子さんはいないでしょうか?
 当たり前のことですが、いっぺんにやったことはいっぺんに忘れてしまいます。ところがその宿題を例えば、基本問題、練習問題①、練習問題②のように、3日間に分けてやるだけで定着度は上がるのです。「エビングハウスの忘却曲線」は有名ですが、その理屈通り、いったん短い期間(2日間)を使ってわざと忘れさせ、忘れたころに復習を入れて忘れにくくするのです。逆に一気に続けてやってしまうと記憶が新しいままその勢いでできてしまうので、その分忘れるのも早く、一週間後の確認テストで点数が取れないなんてことが起こるのです。
 子どもは一気に宿題を終わらせたいので、分散して学習することに抵抗があります。しかし、学習効率と定着度の向上には、長時間同じことをやるよりも細かく分けてやるほうがずっと効果があります。自学ノートなどで一週間のスケジュール管理できるようになっていると、分散学習もスムーズにできます。
 さて、今年もあとわずかとなりました。受験生は風邪やインフルエンザが流行り始める時期です。体調管理には十分お気をつけてください。