『できないと指摘しても何も始まらない』 2017年6月
できない、わからないと指摘したところで何も始まらない。これが私たち道場で指導するものの信条だ。できない、わからない、では、どうすればいいか。ここから私たちの仕事が始まる。子どもたちはできない、わからないから、ここに学びに来ている。道場スタッフはそれを覚悟して子どもたちを迎える。
わかる、できると思えていない。わかろうとしない。では、どうすれば向き合うことができるのか。そもそも人の話を聞いていないのか。わかるような話し方をしていないのか。おもしろくない教え方をしているのか。聞きたいと思えるように話すにはどうすればいいのか。聞いてはいる、しかし違う文脈で捉えているのか。書いてある、だが読めていないのか。どうすれば伝わる。この問題ができなければ、もっと基本へ戻った方がいいのではないか。教えすぎてわかったふりになっていないか。できたでしょう、は通用しない。忘れてしまっているのが前提、だから忘れないためにはどうするか。
日々、子どもたちのその日の様子・反応・手ごたえをその瞬間瞬間に捉えて、その子に最も有効で教育的な指導・教材を考えて、授業を、教室をつくっていく。子どもたちとこの瞬間に生きている実感、ライブ感覚でいられることが私たちの働き甲斐になっている。やっていて楽しいから、子どもにも感覚でつたわる。目の前に、おもしろく楽しんでいる人がいるから付き合う。
子どもたちに行きたい学校の合格を勝ち取らせることが、私たち学習塾の人間の最終目的。だが、日々彼らの学び・成長に立ち会っていられる。この瞬間を感じること自体に私たちの気持ちは高ぶる。ともに学んでいるから続けられる。子どもも私たちも本当に、心底学びたい、学べる場が「道場」なのだ。
西郡学習道場代表 西郡文啓