西郡コラム 『「講和」、子どもたちに話したこと』

『「講話」、子どもたちに話したこと』 2017年7月

長野県の公立小学校、北相木小で、年度最後の花まる授業では「講話」、子どもたちに何か話をすることになっている。昨年は、数日後に卒業式を控える6年生に贈る言葉として中学生の生活、学習について話をした。このクラスは4~6年の合同授業、4、5年生には予習と思っていつもの通り参加してもらった。
 授業を重ねるたびに、この4~6年生の合同クラス、約40名の子どもたちの学習が、その取り組み方がいかに本質的で、意味のある、素晴らしいものになっていっているか、3年間成長しているかを実感してきた。彼らは一生の学習の基本をすでに手にしている。これを忘れないで自信をもって続けてもらいたいと思い、最終授業のテーマは「みなさんは気づいていないかもしれませんが、あなたたちの学習は、奇跡、まれ、とてもすばらしいのです」にした。
 しかし、私が授業中、一方的に話をしても退屈でつまらない。子どもたち自身から引き出すために、4~6年生各学年一人ずつ計3名を一グループにして、「①北相木小の学習、ここがいい」「②北相木小学習で、私たちはこう変わった」「③北相木小での学習、これは続けたい」の課題をだし、それぞれについて話し合い、発表してもらうことにした。
「大きな声出しでスッキリした」「声を出すことで覚えられる」「なんでもできるんじゃないかと思えるようになった」「メガ盛(計算問題サボテン追加)のタイムが縮む、達成感、やった」「Think!Think!(なぞペーアプリ)で思考力がついた」「授業の理解力が上がった」「集中力がついた」「とりあえず楽しい」「学校が楽しい」「自分から行動できる」「わからなくてもあきらめない」「わからないことはわからない、きくことができる」「負けてもくじけない」「イメージができるようになった」「英語モジュール(花まるメソッドをもとに学校独自で作成したモジュール学習)で英語が楽しくなった」「書くことが苦にならない」「青空協室で自然と触れ合えた」「協力して課題に取り組めた」など、私たちが感じていることは、子どもたちからも当然、湧き出てきた。
 その中でも予想だにしなかったのが、「人が、人間が好きになったことです」という6年生の女子の発表だった。「どうしてそう思うの」と聞くと、「いろいろあったから、ぶつかったり仲良くなったり、と」という答えだった。「人が好き」になったという彼女自身から絞り出てきた言葉は感慨深かった。友達ができたとか、思いやりを持ったといった道徳的な、表面的なきれいごとには聞こえない、生々しくも爽やかだった。ここは、山村留学生が半数を占める学校、学級。親もとから離れて、子どもたちが寝食をともに生活する。表明的な関係性では、人の感情は抑えられない、避けて通れない、心底ぶつかるが逃げ場もなく、当事者同士が解決するしかない環境が整っている。それらを幾度も経験して、「人が好きになった」と語ったのだ。
 この学校教育の現場に、民間学習塾の人間が立ち会っている。

西郡学習道場代表 西郡文啓