『ART のとびらきはん – 大人向け解説ver.-(2)』2017年10月
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2 うまくいかなくてもくじけない
完璧を求めるのではなく楽しんでやることを知る人は、自らを信頼する人
です。うまくいかないこと、自分の限界を感じることもあります。立ちはだ
かる壁を前にしても、くじける必要なんてないのです。一緒に考える先生も、
同じ時間を共有する仲間もみな、一個の表現者です。
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「うまくいかない」と葛藤する経験が重要です。
じゆうを担保された、正解のない創作の世界でも、子どもたちは、内なる自分自身との対話を通して、思い描くイメージを表現しています。「どうしたい?」という問いに対する答えを追求する、誰にも邪魔されたくはない時間に、それは起こります。
経験値がある分、大人はとかく「そうしたらきっと失敗する/うまくいかない」と、未来への予想がついてしまいます。
「(きっと汚れるから)ダメ」「(たぶんひっくり返すから)やめて」「(おそらく一人では時間がかかるから)それ貸しなさい」…普段の生活でそれが当たり前になっていると、いざ遊びや創作の空間でも、ついいつもの調子で、彼らの体験や主体性を奪ってしまうのです。
彼らが「葛藤している」時間、「あ!しまった!」という表情は、この世の最も尊い瞬間。それでも私はいつも笑います。「それも面白い。そこからどうしようか。」「いいよ、試してごらん」そして最後はいつも「よかったね」で終えるのです。
じゆうとは、責任が伴うものです。最後まで経験させてあげること。
大人が手を出しすぎないことによって、子どもたちの葛藤から生まれる、柔軟に発想して工夫する創造力を、失敗は失敗じゃない、別の何かが生まれる瞬間だ、と知る体験を、子どもたちに与えることができるのです。
昔の人は言いました。「かわいい子には旅をさせよ」と。
日常は彼らにとって、小さな旅の連続です。
大人の方が葛藤しながら、彼らにはたくさんの旅を経験させてあげられますように。
井岡 由実(Rin)