『ART のとびらきはん – 大人向け解説ver.-(3)』2017年11月
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3 じかんがきたらおしまいです
何事にも終わりはあります。
しかし有限な時間をどうやって濃密に使うのかは、自らの意思によって決
めることができます。時間に振り回されない自分、というものを獲得するこ
とができるはずなのです。より多くのものをうみだす人は、そのことを知っ
ています。
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静かに没頭していた子が、突然顔をあげ振り返り、後方の時計をじっとにらみます。眉間にしわを寄せ考えた後、私と目が合いました。「大丈夫、30分までだから、あと40分以上もあるよ」と小声で伝えると、ホッとした彼は何も言わず、また自分との対話へと戻っていきました。
「人生は、終わりがあります。今日のこの時間も、おしまいのときは来ます。さあ、ここまでしかない。というときに、全力を出し切ったといえる自分でいたいね。あとこれだけの時間で、完成まで持っていきたい、といつも考えられるといいね。なぜかというと、いったんひとくぎり、頭と心を切り替えることができる人は、たくさんのものを生み出す人だからです。」
小学一年生から、中学生までが同じ空間にいるとき、どの年代の子どもたちにも絶対に届くように、真理を話すことを心掛けています。子どもたちは、それが本質的であるかどうか、だけを見抜いている生き物だからです。
たとえ誰かが決めた時間に沿って何かをしなくてはいけないときでも、「頭と心を切り替え」て、自分の人生を自分で創っているという感覚を持てていると、自分の気持ちに正直に生きることができます。そのことがもたらす自信、充実感。
「早くしなさい」でも「もうおしまいだから」でもなく、自分が大切だと信じた哲学を軸に、「自分で終わりだと決めたんだ」という納得を、いつもしていけるかどうか。そのことを子どもたちに伝えたかったのです。
毎回冒頭で子どもたちと確認する、「ARTのとびらきはん」。その大人向け解説も、最終回となりました。次号からは、また教育とARTの交わるところから見えたことを、みなさんと共有していきたいと思います。
井岡 由実(Rin)