『集中力が磨かれる』 2019年7月
自分事として学習に取り組んでいる子どもは、当然のように集中状態に入ることができる。集中して学習する習慣とは、時間の無駄を省き、効率がよいことを言う。
花まる学習会が提携している公立小学校では、集中力を磨くための練習として、複数の課題を短い時間で切り替えて、テンポよく実践する『花まるタイム』を実践している。朝、授業が始まる前の15分間、音読、計算、書写、平面・空間認識の4つの学習を、3分ずつ切り替えて実施している。3分という時間制限(タイムプレッシャー)が迫る緊張感の中、一つの学習を一気に取り組むことで、集中力が磨かれる。さらに、テンポよく切り替えることは、頭の回転をよくするトレーニングにもなる。朝やることで、神経が目覚め、身体中の神経が張り巡らされた状態を子どもたちがつくる。この頭の準備運動をした後、通常授業に入ることになる。授業の受け方に変化があるのは、当然だ。
家で勉強するときも、長時間ダラダラおこなうのではなく、短い時間で集中する。花まる学習会、スクールFC、西郡学習道場の全学年が取り組んでいる『サボテン』や花まる学習会 低学年コースで使用している『あさがお』は、家庭学習の定着を図るのにピッタリだ。後回しにせず、できるときにやる習慣は、学習だけではなく、仕事ができる人の秘訣と言える。「あと10分で夕食」というとき、「じゃあ、夕食を食べてからゆっくりやろう」ではなく、「じゃあ、その前にさっとやっちゃおう」と、宿題をやり切る。それが自然にできるようにするには、学習に限らずどんなことでも、さっと取りかかることをまずはやってみる。何度も繰り返し、習慣化できるよう、努める。
一方、大人はどうか。洗い物が残っているのに、「すぐに宿題をしなさい」と大人が子どもに言っても、響かない。我々大人が「自分のやるべきことをすぐにやる」を行動ではなく、言葉で子どもに伝えても、なかなか響かない。説得力がないことは、わかるだろう。親の背中を見て子どもは、育つ。
習慣とは、歯磨きのように、意識しなくてもできるようになること。最初は、大変かもしれない。習慣になるまで「敢えてやる」という意志が、大人には必要だ。続ければ、いずれ形になってくる。子どもが意志を必要としなくなるとき、初めて習慣になる。さっさとやれば、すぐに片付いて綺麗になる。その快適さを子どもが実感することこそ、大切だ。思い違いをしてはいけないのは、習慣づくりができたから、学習習慣もできた、ということではない。大人がせっかちに、学習習慣の効果をすぐに求め過ぎてしまうと、子どもは負担を感じる。子ども自身がその習慣を学習にも活かせるようになるまで、長い目で見てあげましょう。ずっと我慢して見守ることも親の大事な役目。
また、場所を選ばない、どんな環境でもすぐにやることも意識しておきたい。何事もやり始めたら集中する。最近では「個室ではなく、リビング学習が効果的」という意見をよく耳にする。一見学習に向かない環境のようにも思えるが、そういった環境だからこそ、より集中力が鍛えられるというのだ。子どもが学習を頑張っているからといって、子どもに気を使う必要はない。家族がソファーに寝転びながらテレビを見ていても、自分は自分、親や姉妹兄弟とは違う、という意識を子ども自身が持つことが大切。人は人。自分は自分。
どんな環境でも、学習するときは集中して取り組む。この習慣を身につけたい。それは一生の宝になる。ただ、すぐにできるわけではない。諦めずに、続ける。
西郡学習道場代表 西郡文啓