高濱コラム 2003年 7月号

親と子の四季の自然スクールでの、父母の皆様との夜の飲み会でのこと。一人のお父さんが、スターになりました。一流芸人も吹き飛ぶような素晴らしい話術で、一座を大笑いさせてくれたのですが、その内容は、「いかに妻が怖いか」「いかに仕事と同じくらい家庭が神経を使う場所か」というものでした。もちろん、笑いのネタにするくらいですから、本当は信頼に満ちた家族に決まっているのですが、男一同「うーん、あるある」とうなずかされる話で、鋭い人間観察を感じました。

子どもに問題が発生したとき、子どものことを話しているうちに、実はお母さん自身の心の不安定が本当の原因だと分かることは、とても多いものです。そしてその場合、ご主人との相互理解の無さを訴えられる方が、最も多いのが現実です。たくさんの相談の経験を踏まえて、お父さんにがんばってほしいところを並べてみます。

苦情の一位は「話を聞いてない」。私もよく言われていました。男の側からすると、早朝から夜遅くまで、仕事に全力を使い果たし、家では、副交感神経支配下というか要するに休息のモードになっているから、少しくらいボーっとさせてくれよと言いたいところですが、新婚当時ならまだしも、長く継続されるうちに、女性は否定(私に関心がない)のメッセージとして受けとめてしまうようです。カウンセリングマインドで、言葉を正しく繰り返す(例えば「お隣の奥さん水泳始めたんだって」と言われたら「お隣の奥さん水泳始めたんだ」というように)だけでも、急速に関係が改善されたケースがあるように、「相手の言葉をきちんと受け止める」ということが、重要のようです。

エリート層に多いのが、妻の苦情に対し「論破」してしまう人。女性が欲しいのは「気にしてくれているかどうか」という一点だから、「それは、君は本当にがんばってくれていると思うけど」というようなねぎらいの一言をまず添えてから、主張をすれば角も立たないのに、ディベートのように言い負かそうとがんばってしまう。亀裂は深まるばかりです。

女性の感情スイッチがオンになったときの身の処し方も、チームワークよく団結していくために大切な点です。基本的に男には分からない状態なので、ついつい「触らぬ神にたたりなし」とばかり、距離をとろうとしてしまうのですが、「どうしたの?」と相手の不幸の原因を一緒に解決する態度で接すると良いようです。これは私自身が、ある女性に教えてもらって、本当に役立ったことです。

一概にはくくれないのは、どんな問題も同じですが、子どもたちの健やかな成長のために、何かの参考になれば幸いです。最後に応援歌の意味で、ある少年の詩を贈ります。

パパの出張
三人になっちゃったね
ほんとは4人なのにね
パパはタクシーにのったとき
どうおもったかな
           四人なのに一人になっちゃった
           かなしいなあ
ぼくはパパとなにをしてあそんだかおぼえているよ
パパのかおもおぼえてる
ずっと四人でいたい
四人かぞくだもんね

花まる学習会代表 高濱正伸