『保護者会で話したこと その一』
新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちがこれまでに経験したことのない非常事態に陥っています。数か月で全世界に広がり、何百万人もの感染者、何十万人の死者を出している惨禍です。想像もできない世界に被われています。相手も見えず、終わりも見えない、冥々と重苦しい不安が圧し掛かっています。私たちの生活が、社会が機能していない、このような苦境の中でも、ご理解とご支持をいただきまして、感謝申し上げます。ありがとうございます。
子どもたちも今までとは違う通学状態が続いています。外出自粛、外遊びも儘ならない閉鎖的な空間に置かれており、心身の発達が著しく最も情操が養われる彼らの年齢には過酷です。子どもたちの心と体のケアが大切です。
緊急事態宣言・休業要請を受け、皆様のご理解とご協力のもと、オンライン授業に切り替え、自宅から学習できる体制をとってきました。オンライン授業では、教えるという私たちからの一方通行ではなく、子どもたちの発信を十分に受け取ることができる、相互交流のコミュニケーションが取れています。授業では動画を使って視覚的により分かりやすい学習内容の解説をおこない、講師の生の声でフォローしています。子どもたち一人ひとりの学習に取り組む様子が画面に映し出され、学習の態度や姿勢、表情が把握できます。子どもたちも隣席との私語もなく、画面に集中でき、見る、聞くなどの五感を働かせています。ZOOMの機能を使って仮想の個室を設け、即移動、個別指導もできます。授業は集団ですが、オンラインでは一人ひとりの学習、個別の学習にフォーカスすることができる利点があり、集団と個別を兼ねた指導ができます。
平日は毎日、授業日以外にも自学室を設け、私も自学室にいます。イベントや講習などの特別なときにしか会えない、お茶の水、用賀、南浦和の生徒ともオンラインでは同じ空間で学ぶことができます。ホームルームでは私が直接生徒に語り掛けることができます。私の話が全教室の生徒にできるのもオンラインのご利益であり、毎日の楽しみになっています。
学習道場は、学習を自分ごととして捉える、当事者意識をつくる場です。自学自習とは何かを考え、取り組み続けることが、学習道場の学習です。学校に通えば、当たり前に学ぶことができます。その当たり前ができないのです。与えられた学習を熟す、待ちの姿勢では何も生まれません。自覚ある“自学”をしなくてはいけない。自学自習が慣れない子どもには戸惑いもあります。自学自習は大人でも難しい。すぐにはできません。しかし、拙くても、自学自習の経験を積ませなければ、自分の物にはなりません。幸い、時間はあります。
自分で学習する時間、所用時間を決めます。全体を見渡して、やることは何かを考え、書き出してもいい。計算、音読など日課の学習を決定し、次に優先順位を考え、何をやるかを決めます。あまり悩まなくてもいい、時間をかけなくていい、と伝えています。何をやろうかと考えすぎて手が止まる子もいます。やることを決めたら、“集中してやる”“実行する”のみです。そして、最後に振り返ります。低学年には振り返りは必要なし、前向きにイキイキ、目の前の興味関心にどれだけ没頭できるかが大事だと思っています。4年生以上になって、振り返ることが必要になるのは学習法を自分でつくっていくからです。
まず、予定を立てる“plan”です。次に、実行する“do”です。そして、振り返る“check”する。このサイクルは、中学、高校、大学と進学するうえで、また、社会を担う大人になるうえで、いつかは身に着けなくてはいけない、基本的な学習法です。小学生にとっては難しく、すぐにはできません。しかし、拙くても自学自習の経験を積ませなければ、自分自身の学習法は作れません。自分自身の学習法に拘るのは、人それぞれの能力が違うからです。
授業、自学の開始時には、ホームルームがあります。冒頭、私が話をするようにしています。何かを教えるのではありません。「なぜ学ぶの?」「なぜ自学がいいの?」といった学習観、学習の仕方、ものの考え方について話します。そして、そのことを子どもたち自身に考えてほしいのです。
西郡学習道場代表 西郡文啓