『憶え方を覚える』 2023年4月
憶えられない、憶えるのは苦手という生徒は多い。やりたくない生徒は憶えられない、苦手と不平から入る。すぐに憶えられる人は、まずいない。憶えられないからどうするか。憶えられない自覚から学習が始まる。できない、わからない、憶えられないから道場に来ている。憶え方を学びに道場に通っている。
感動したことはよく憶えている。心を揺さぶられれば揺さぶられるほど心に残る。自然と頭に残っている。自分の感性で感じることは、憶え方の基本だ。五感を使うほうがより憶えられる。書いて手で憶える、見て憶える、音読して音で憶える。何度も音読すると暗唱できる。国語も英語も音読が基本。文字を音に出して耳から入れて身体で憶える。憶えることを苦にしていない生徒は五感を使うことを当たり前にして、書くこと、読むこと、話すことを苦にしない。憶えることを面倒だといっている生徒は自分の感性を使わない。使わないからおもしろくない。
文字だけではなかなか覚えられないからイメージする。文字と絵とを一致させ、思い描くことで憶えやすくなる。読み聞かせをすると、子どもたちは集中してよく聞いている。聞きながら自分なりに映像化している。道場には文章を絵に描く教材がある。文章を自分で想像して、絵に描く。描くことが習慣になるように、毎回の授業や課題で取り組んでいる。絵にすると憶えやすくなることを覚えてほしい。文字を書くことは一手間かかるが、この一手間を当たり前とすることが学習習慣になる。習慣は自分の能力を伸ばす。答えのない、お絵かきを好む生徒は多く、子どもはおもしろい発想で文章を絵にする。
おもしろいと思い、好きになると憶えられる。恐竜、虫や電車など好きなこと、興味を持ったことに子どもは憶えが早い。好きなことに対しては熱心に努力するので、上達が早い。「好きこそものの上手なれ」。好きになるともっと知りたいという向上心が湧く。これって何だろう、どうなっているのだろう、なぜそうなるのだろう、という疑問や興味をたくさん持つようになる。興味関心、好奇心、向上心は憶え方のセットになる。
道場の生徒で漢字の学習が得意という生徒に話を聞くと、花まるの漢検で満点をとって、それが嬉しくて漢字を憶えるのが好きになったという。憶えるのは脳の働きだが、好きになると前向きになり、脳がより働くそうだ。嫌いと苦手と決めつけるとますます憶えられない。ちょっと頑張ってみる努力は必要で、努力が結果を生み、結果がともなうと好きになる。おもしろくするのも努力次第。憶え方の一つとして努力は要る。
ずいぶん昔のことでもよく憶えているのは、物語があるから。花まる、FC、道場と多くの生徒が巣立っていった。生徒一人をひとり憶えるために、その子の象徴的な出来事と、その子を結び付けて憶えるようにしている。名前が出てこなくてもその子を見れば、印象の残るシーンがよみがえる。エピソード記憶というらしいが、漢字の憶え方でもエピソード記憶を使っている。辞書をひいて、読み、偏、意味、成り立ち、熟語を調べて、その漢字のエピソードを作って関連づけて憶えている。
憶えた先から悲しくなるほど、よく忘れる。忘れて当たり前、忘れることを嘆かないようにしている。憶えるのは頻度、より多く当たればそれだけ憶えられる。忘れたら、また憶えればいい、忘れるから、また憶える。歯磨きと同じ、習慣にする。今日は歯磨きをするぞ、なんて意志が働かなくてもやってしまう。何度も繰り返すうちに習慣になる。効率がいいのは、憶えたか忘れたかをチェックすること。憶えていれば〇、忘れたら×、時間をおいて、また〇×をつける。自分に正直になって自分基準を持つことが、憶え方の基本だ。
聞いてもすぐに忘れる。4桁の数字を例えば、3879と私が読み上げる。4桁、5桁を憶えている生徒は多いが、6桁7桁……となってくると憶えている生徒は少なくなってくる。記憶力の差、集中力の差はある。次に、鉛筆(ペン)をもって紙に書いてもいいことにして、6桁7桁……と数字を読み上げると大概の生徒はその数字を再現できる。憶えられないならメモをとればいいことがわかる。授業中にメモをとり、あとで見返して授業の内容をよみがえらせる。ノートをとるのも同じで、要点をまとめているのがノートだ。ただ写すだけでは、形だけの学習になる。自分に正直になって自分基準を持つことが大切で、工夫して、メモをとり、ノートをとることも、憶え方の学習法だ。
自分基準をもって、自分の憶え方を覚えていく。
西郡学習道場代表 西郡文啓