『世界を作り出せる自由』2024年3月
自由ってなんでしょうか。
3歳児から中学生までがいっしょに集まって創作をする前に、子どもたちに必ずする問いがあります。
「じゆうにやりたいようにつくってください」――アートのとびらきはんで示す“自由”について、みんなで考えるのです。何度もこの問答を経験している子どもたちのなかには、「じゆうとは、自分で決めること」と発表してくれる子もいます。
「誰かのためではない、自分のための制作をすること」
「自分がどうしたいか、を自分に聞くこと」
「やってみたい、と思ったことを貫いていいということ」
「真似をしてみたい! と思ったら、やってみてもいいこと」
「なぜなら、あなたのフィルターを通して出てきた作品は、あなたにしか作れないものに勝手になるから」
最後に、「自分にしかできない作品になるのだから、自分を信じてやり抜いてください」と伝えます。
「ワークショップがあった日、娘はよくしゃべり、よく食べ、身のまわりの細かいことに疑問を持ち、とても楽しそうでした。4月から1年生になり、朝も夜も時間との戦い。マイペースに過ごす時間はとても減りました。まだその生活にも慣れない娘にとってワークショップはオアシスだったのだと思います。心が解放されると、世界が楽しく見えて、たくさんのことが吸収できる土台になるんだなぁと親も勉強になりました」――1年生のお母さん
「学校では、これを使って、こうして、こうやってってね、色は自由だけど決まりがいっぱいあるの。りん先生はちがう。“ホントに”自由なの」――1年生
「図工はね、できあがったら、もっとこうしなさい、っていう“評価”の時間があるから、作るときはそれを考えないようにしているの」――2年生
図工だけではなく、普段の生活でも、大人が「いうこと聞いてくれないな〜」と思っている場面で、実は子どもも「大人のルールに合わせなくちゃいけないな〜」と感じていることが多いのかもしれません。
つまり彼らにとってのじゆうな工作は、自分で決めて、自分の手で世界を作り出すことができるから嬉しいのだ、と改めて気づかされるのです。
外の価値基準にばかり合わせて生きていると、自分の心を見失います。
「何におもしろいと思うのか」「何を美しいと思うのか」「何が楽しいと思うのか」そんな些細な関心の積み重ねで、私たちの人格はできています。
「自分が何をしたいのかわからない大人」がなぜいるのかを考えてみるとき、私はいつも「“ホントに”自由なの!」と言った彼女の言葉を思い出します。
そう。誰でも子どもの頃は、知っていたはずです。自分がやりたくて仕方のないこと、興味深く見つめるもので、世界は満ち満ちていたことに。その頃の関心を思い出せれば、大人になったいまのあなたの生き方の、何かにきっとつながっています。
じゆうな遊びのなかにあったあの頃の自分が、世界を作り出していたときのことをいつでも思い出せるように。人生の羅針盤を、いつでも取り出して確認できるように。そんな思いで子どもたちとかかわっていきたいと思います。
井岡 由実(Rin)