『母の心配』 2024年5月
前号でもお伝えしましたように「幸せな受験ラジオ」では、4月から卒業生の保護者インタビューを配信しています。
一人目の方は、私が昨年度担当した生徒のお母さまでした。第一志望が決まった6年生の夏過ぎからやる気に火がつき、見事合格をつかんだ生徒です。そうした順風満帆に思えるようなご家庭でも、受験を振り返ってやっておけばよかったことの一つは、「もっと丁寧に字を書く習慣をつけておけばよかった」ということでした。彼のノートを見る限りは、入試では問題のないレベルだと感じていたのですが、「もしも入試本番で、字の汚さから本人の写し間違いや採点者の読み違いがあったら…」という親としての心配はなくならないものです。私たち塾講師はそのあたりも冷静に見ていますので、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。
やっておけばよかったことのもう一つは、「受験する学校はすべて見学しておくべきだった」ということでした。都内を進学先と考えていたために「1月校」は見学に行かなかったそうです。ところが2月の押さえ校の入試が終わったときに「試験中に気持ち悪くなった」というわが子の言葉を聞いて、もしも押さえ校がだめだったら一度も見たことのない学校に進学するかもしれない。親として苦しい気持ちになったそうです。想定外のことが起こるのが受験です。ぜひ参考にしていただければと思います。
二人目の方も今年卒業された受験生のお母さまでした。受験を通じて一番苦しかったことについては、「幼さのあるわが子を中学受験にどう向き合わせればいいのか、ずっと苦しかったような気がします。何かできないことがあれば私のせいかもしれない。受験生の親御さんはみんな苦しいのではないでしょうか」と言われていました。親としての不安や心配事は受験が終わるまで尽きないことを、こうしたインタビューを通じて改めて感じています。
三人目の方は過去にご兄妹がスクールFCの高校受験コースに通われていたお母さまでした。お兄ちゃんは、花まる時代から「なぞぺー」大好きのザ・理系男子。運動はあまり得意ではなかったのですが、中学の部活で剣道にはまり、毎日部活でヘトヘトになりながらも、最後には文系科目をなんとか克服して見事第一志望に合格した生徒です。当時親として一番大変だったことは、願書を出し忘れる夢を一週間くらい毎日見たことだそうです。実は妹さんのときも願書の提出が一番大変だったと笑っていました。「子どもががんばった結果を親のミスでつぶしてはいけない」というプレッシャーは当事者にならないとわからないかもしれません。私は実際に願書の提出期限に間に合わず受験できなかったご家庭を知っています。私学であればご配慮くださる場合もあるかもしれませんが、公立の学校だったため一切受けつけてもらえませんでした。親御さんの気持ちを察するとつらくなります。
中学受験は親の受験、高校受験は本人の受験と言われがちですが、ネット出願の現代では、保護者がさまざまな書類を整えてネットで送らなくてはいけません。ほとんどの方にとっては慣れない作業になりますから、そういう点では高校受験における親御さんの役割も重要になっています。
夏の気配が感じられるようになりました。受験生は夏過ぎから過去問題の演習に入ります。二人目のお母さまは、「過去問のコピーが一番大変でした。学校ごと、教科ごと、年度ごとの問題用紙、さらには解答用紙の拡大率もさまざまで、ページを行ったり来たりしているうちにどこをコピーしたかわからなくなってしまいました。あれは疲れているときにやるものではありませんね」と実感をこめて話されていました。
三人の方に共通することは、「自分のせいで子どもの勉強や受験に不都合があってはいけない」という親心です。そうした保護者の方の気持ちをしっかりと受け止めながら、引き続きサポートしてまいります。
スクールFC代表 松島伸浩