『子どもがマネる、大人の振る舞い』2024年6月
子どもはとにかく真似して学ぶものです。私もよく「家で先生のマネをしているんです。だからどんな授業かわかります〜」「美しいね、おもしろいね、という言葉を使うようになりました」と言われたりします。
子どもにことばかけをしたときに、いったい何が伝わっているのでしょう? 彼らは、大人の口調やそぶりをそっくり真似してしゃべっていることがありますが、それはある意味、「子どもに何が伝わっているか」がよくわかる事例かもしれません。
「〜しちゃダメでしょう」と何度言ってもちっともいうことを聞かない子どもが、子ども同士のやり取りのなかでは「〜しちゃダメなんだよ?」なんて、大人のふりして小さな子どもに注意していることがあります。「わかっているなら、あなたもやってよ(笑)」と思わずにはいられないかもしれませんが、それは「大人の練習」をしているんだなと微笑ましく見守ります。
靴をぬぎ散らかす子に、いろいろ言うよりも「こうやって揃えるものなんだよ」と言って、目の前で靴を揃えて見せて、それ以上触れないほうが、やがて芽が出たときには素直に伸びるものです。
そのようなやり方は時間がかかるし、何度も繰り返す必要があります。けれど、そうやって「大人の振る舞い」を見ていた子は、そのうち自分より小さな子の前で「こうやるのよ」と言って大人の役を演じるようになります。
「ああしてこうして」と反発心を呼び起こすよりも「大人とはこうして振る舞うものだ」ということを目の前で身をもって示してあげるほうが、素直に子どもに染み込んでいきます。「ああしてこうして」と言いすぎていると、子どもはそれをそのまま「大人の振る舞い」として身につけ、人にいろいろと小言を言うのが大人だとどこかで思うようになっていくのでしょう。
先日、「なぜかっていうと……」の言い方を大人にも口マネされました。きっと私は、子どもたちに何かをしてほしいとき、何かを伝えたいとき、「その理由はなぜなのか」も一緒に伝えるのが口癖になっているのだなと気づきました。
だから私は、少し話が長くなるけれど(笑)、子どもたちには「なぜだと思う?」と問いかけるのでしょう。「どうしてだと思う?」とその行動の理由をいつも考える。そうすると、「大人がそうしろと言ったから」するのではなく、納得して自分でものごとを決める機会にすることができるからです。
「授業のあった日はずっとRinせんせいになりきっていろんなイベントをする、Rinせんせいごっこなるものをしていました(笑)」
「息子は“これをRinせんせいふうに言うと~”と言うときがあり、それは必ずポジティブな表現や内容です。自由にやっていいのだ、うまくいかなくてもくじけずに、発想の転換をすればいい、などです」
……とこの原稿を書いているいまも、保護者の方からのメッセージは止まりません。つくづく、大人は子どもからマネられるものなのだ、と背筋が伸びる思いです。
みなさんも、わが子が外で自分のどんなマネをしているかな? と想像するとおもしろいかもしれません。
井岡 由実(Rin)