松島コラム 『新しい教育』

『新しい教育』 2019年6月

 昨年に引き続き6月9日、23日の両日、御茶ノ水のソラシティアカデミアで、スクールFC主催の「子育てシンポジウム」を開催いたします。皮切りとなる9日の午前中の回は、「新しい教育」がテーマです。この回では、今年度から花まるグループに本格的に参画してくださった「いもいも」教室主宰の井本陽久先生、その井本先生の活動を取材した『いま、ここで輝く』(エッセンシャル出版)や『塾歴社会』(幻冬舎新書)など、多数の教育関連の著書をお持ちの教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏、21世紀型教育機構の理事であり、『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)の著者でもある、前かえつ有明中学校・高等学校校長の石川一郎先生、そして、さいたま市初の女性教育長として、今年開校したさいたま市立大宮国際中等教育学校の設立に尽力された、細田眞由美さいたま市教育長をお招きします。私もファシリテーターとしてお手伝いさせていただきますが、私塾、私学、公教育、メディアのそれぞれのお立場から、これからの教育への思いと実践について、どんなお話になるのか、今から楽しみです。ぜひ皆様の多数のご参加をお待ちしております。
 さて、今年は例年以上に学校説明会に出かけるようにしています。塾講師として
30年、これまで数多くの学校に足を運びました。しかし首都圏だけでも300校近い私学がありますから、すべてに精通しているわけではありません。また数年でカラーが一変する学校もあります。学校名の変更や共学化、高校募集停止、校舎移転や建て替えなど、私学も生き残りをかけて学校改革を積極的に取り組んでいます。特に最近は大学入試改革の影響を受けて、入試要項を変更する学校が目立ちます。塾の講師であっても常に情報のアップデートが必要なほど教育界は激変の時代に入ってきています。
 私学には建学の精神があります。多くの学校では、社会に出てから活躍できる、社会に貢献できる人材の育成を柱にしています。ある学校の説明会で広報担当の先生が、有名大学への合格者数の減少を、「来年に向けての課題」という言葉を使って話されていました。触れないわけにはいかない内容なのかもしれませんが、その学校が掲げる教育目標とその言葉の使い方との間に、何か違和感を覚えました。もちろん、希望していた大学に入れなかった生徒への申し訳なさはよくわかります。改めるべき点は改めたほうがいいでしょう。しかし、高校生ともなれば、結果を自分の責任として受け入れてほしい時期です。社会に出れば当たり前のことでもあります。そうしたことも含めた教育こそが、建学の精神につながっていくのではないかと感じました。
 また東大の合格者数を減らしたことによって、その学校の評価が下がるわけではありません。個人的にはそう思っています。たまたまその年は、自分が進みたい大学が東大ではなかったという生徒が多かったのかもしれません。そうした生徒一人一人の希望を尊重しサポートした結果がそうであったなら、むしろそれは素晴らしいことですし、幸せな受験を実践されたのだと思います。
 N高という通信制高校の生徒が1万人を超え、さらに増え続けているそうです。一昔前の通信制高校には、何らかの事情で全日制に通えない子どもたちの受け皿的なイメージがありました。しかし、最近ではそうした事情がなくても、こうした新しい学校を積極的に選ぶようになっていると聞きます。桜蔭中からN高に進んだ例もあるそうです。N高はいわゆる科目授業以外の時間は、多様な選択肢(プログラミング、音楽や映像制作など)の中から、好きな授業を選ぶことができます。対照的に、成績のよい生徒は普通高校、そうでない場合は商業高校や工業高校に進むという地方の公立高校への進路指導は、子どもの興味や関心とはまったく関係ないところで決まっていました。興味があまりないけど仕方なく商業高校に進学する。本当は建築や機械を高校から学びたいけど、まずは大学進学優先で普通高校に進学する。それが当たり前でした。しかし、これからは、中学や高校から海外も含めて多様な選択ができる時代になっていくのではないでしょうか。その点では私学もその独自性をもっともっと発揮してほしいと思います。今後は学校選びの参考になる私学の情報もお伝えしてまいります。

スクールFC代表 松島伸浩