松島コラム 『通信制高校という選択』

『通信制高校という選択』 2024年10月

 今回は高校受験のお話をしたいと思います。と言いましても、全日制高校ではなく通信制高校についてです。
 先日の「幸せな受験ラジオ」で声の教育社の三谷さんも言われていましたが、近年通信制高校の人気が急上昇しています。しかし多くの方々は、通信制や定時制は、昼間働いている学生や何らかの事情で高校に通えなかった社会人が、高校卒業の資格を取るために通う学校というイメージを持っているのではないでしょうか。
 最近では、CMでN高等学校やクラーク記念国際高等学校という名前を目にしますが、2023年度の通信制高校の生徒数は26万4974人と、実に高校生の12人に1人という割合です。学校数は289校(公立78校、私立211校)で、2000年からの23年間で2.5倍に増加、特に私立の新設ラッシュです。先日文科省から発表された学校基本調査の速報値によれば、2024年度の通信制高校の生徒数は前年よりさらに2万5144人多い29万118人と、9年連続で増加し、過去最多になったということです。
 通信制高校の授業の基本は、レポート提出、スクーリング(通学)、テスト(単位認定試験)の3つです。通学に関しては、年に3日~5日、月に1日~2日、週に1日~4日、週に5日(全日制と同じ)と学校によってさまざまです。日数が少ない場合は自分で勉強を進めなくてはなりません。充実したオンライン授業やサポート校を利用することもできます。ちなみに学習塾が通信制高校と提携してサポート校になっているケースも増えています。
 高校卒業に必要な科目(単位)以外では、学校独自のさまざまな授業を受けることができます。アニメ・ゲーム系、スポーツ系、声優・タレント系、ヘアメイクなどの美容系、プログラミングや外国語・ビジネススキルなどの学習系、福祉系や農業系など、学校ごとに本当に多彩な授業が用意されています。
 通信制高校の人気の背景には、不登校児童生徒の増加があると言われています。昨年度、全国の小中学校の不登校の児童生徒は、過去最多の29万9048人となりました。こうした子どもたちの進学先として通信制高校が選ばれていることも事実です。文科省の委託調査(2017年度)では、通信制高校に在籍する生徒の半数が小中学校での不登校経験があったということです。こうした動きのなかで、文科省は今年度から不登校の高校生が学びを継続できるよう、オンラインでの遠隔授業などを単位として認めることにしました。これまでは病気で登校できない生徒への特例はありましたが、不登校の生徒が自宅で遠隔授業などを受けることは認められていませんでした。時代に合わせた柔軟な対応は評価できます。
 しかし、いまや不登校の生徒だけでなく、その自由度の高さから、中学卒業後に積極的に通信制高校を選ぶ生徒も出てきています。専門性を高めたり、より自由な学び方を求めたりしながら、難関大学に進学するケースも増え、その点でも多様な生徒の受け皿になっていると言えます。
 実は2025年4月、私の故郷である群馬県桐生市にR高等学校が開校することになりました。R高が使う校舎は、2021年に統廃合となった桐生女子高校(通称:桐女)の跡地で、その桐女と統合したのが私の母校である桐生高校なのです。ご存知の方も多いと思いますが、これまで北関東の県立進学校の一部は男女別学でした。現在でも群馬県では高崎・高崎女子、前橋・前橋女子、栃木県では宇都宮・宇都宮女子、そして最近共学化の賛否で話題になった埼玉県の浦和・浦和一女などがあります。浦和・浦和一女のときと同様に、母校の共学化については相当な議論があったと聞いています。しかしながら、人口減少、少子化の波には勝てず統合の道を選びました。その桐女の跡地にR高という話題の通信制高校が入るとは考えもしませんでした。桐女OGの気持ちはいかばかりかと思いますが、学校には地域のコミュニティとしての大きな役割があります。名称や中身は変わりますが、こうした新たな動きが地元の活性化につながるのであればうれしい限りです。
 昨年の母校の同窓会は桐女OGも加わり、盛大かつ華やかに行われたと聞いています。別学だった頃の淡い青春の思い出とともに、心のどこかで憧れていた共学の雰囲気を感じることができたのなら、「統合も悪くないね」と思った人もいたかもしれません。私もいつか参加してみたいと思っています。

スクールFC代表 松島伸浩