『朝道場をやりたい、わけ』 2022年5月
佐賀県武雄市は、「民間のノウハウを導入して私立小学校を改革する」という市の政策に花まる学習会が協力している。武雄市に公立小学校は11校あり、各学校の名称は「花まる学園○○小学校」(通称)になっている。花まる学習会の社員2名が武雄市に移住、常駐して花まる学習会の指導メソッドや教材を学校で使用できるように、各小学校を巡回している。武雄市とは10年間の約束で、2015年から始まり、今年が8年目になる。
主な活動は、朝、授業前の時間を利用した「花まるタイム」、思考力教材「なぞペー」を使った授業、全校生が異学年で班を組み問題に挑戦する「青空協室」だ。この花まる学習会の指導メソッドや教材を通して、児童の学習や先生の指導法に貢献している。
「花まるタイム」では、心身を解放する「音読」、名文・美文を書き写す教材「あさがお」、図形センスを啓発する「キューブキューブ」、計算問題の「サボテン」の4つを毎朝15分間、各クラスで実施する。公立小学校の始業前の時間帯に、民間の指導法と教材を市内全公立校に導入すること自体画期的なことで、さらに、この朝の時間帯に地域住民を参加させるという踏み込んだ改革を、市は実現させた。地域住民は児童と一緒に音読する。「あさがお」や「サボテン」の〇つけをするなど補助をする。「コミュニティ・スクール」の設置が全国で進められているが、武雄市の住民参加の「花まるタイム」は、コミュニティ・スクールの具体策になっている。
住民が教室に入ることで、教室は開かれる。教室は担任教師の独善的な場になりがちだが、教室を開放することで独善は抑制される。住民参加の、開かれた教室は即効性のある、有効な学校改革になっている。「花まるタイム」の導入は、住民参加の契機となった。
改革には抵抗がある。音読や計算は学校でもやっている、どこが違うのか。毎朝ではなく週3回でダメなのか。朝の時間は健康観察がある、読書の時間もある、そもそも朝、先生は忙しい。民間を導入する意味があるのか、エビデンスはあるのか。などさまざまな疑問、反論、抵抗があった。それらに対して、児童にとっても生徒にとっても住民にとっても、民間のノウハウの導入は、学校教育を否定するのでなく豊かにすることになる。このことを常駐する花まる社員が、校長、教頭、主任の管理職から、学校の教職員、そして保護者、地域住民に説いて回る。各学校では教職員に指導メソッド、教材の趣旨と進め方を説明して、模範を示し、先生方に模擬授業をしていただく研修を重ねた。花まるの指導メソッドや教材が学校現場に新たな視点をもたらす、現場で生かせると理解する先生も増えてきた。率先して学校教育にも取り入れる先生も出てきて、導入を推進してくれた。保護者、地域住民には、講演会を開き、公民館、老人会、自治会などにも花まる学習会の社員が出向いて「花まるタイム」を実演して理解を求め、参加を促した。そして、地域の住民が朝、学校に集まり、各教室に入る「花まるタイム」が実現している。
学校の「花まるタイム」は毎朝、毎日できるから、音読も書写も計算も図形センスも感覚が磨かれ、上達を児童が実感できる。音読は読解の基礎を育てるだけでなく、声を出すことで心身を解放、覚醒して、一日の活動が始められる。書写は名文を体得するだけでなく、覚えて書くという暗記力を伸ばし、一定の字の大きさで書き綴ることで書き方が上達して、精神の成長を促す。「キューブキューブ」など図形に取り組むことで見える力を磨く。“できちゃった、わかっちゃた"体験は図形に対する苦手の意識を払う。計算は算数の基礎力を向上させるだけはなく、タイム制限で集中力を鍛え「脳トレ」にある。これらを15分間でテキパキとやることで、児童は切り替えと段取りを学ぶ。「他人と比べない」指導理念は自己の成長に楽しさを感じ、クラスのヒエラルキーを打破する。そして、児童も学校職員も保護者も地域住民も「花まる学園○○小学校」を受け入れる。朝の「花まるタイム」は、全国の小学校でやってほしいと願う。小学校の朝が変われば、学校は変わる。
西郡学習道場はオンラインでの活動になり、毎朝、家庭と私たちをつなぐことができるから、「朝道場」が実施できた。朝、心身を解放して、自分の能力を発揮できる状態にして、一日が始められる。
西郡学習道場代表 西郡文啓