『2023年度の中学受験 その1』 2024年3月
年明け早々に中学入試が始まる。首都圏から遠距離にある学校が、都内に試験会場を設けて入試を実施している。学習道場の受験生も、確実に合格できるレベルの学校の入試に挑む。本番の雰囲気を経験して、実際にどれほどの点数が取れたのかを確かめ、合格したという自信をもって、これから始まる首都圏の入試を乗り切っていく。
人生初の入試で合格を手にし、お試しとわかっていても浮かれて楽観して、危機感のない入試直前の時間をすごしてしまう。複数校、複数回、受験をするなかで第一希望を一発で決める子は稀で、多くは人生初の不合格をくらい、浮かれた後だけに動揺も大きく、落ち込みすぎて力を発揮できない子も出てくる。この子たちをどれだけ平常へ戻し、目標に向かってやりぬく気持ちへと高めていくか、受験担当スタッフは苦心するところだ。
1月上旬から埼玉県、中旬から千葉県の中学入試が始まる。2月に控える東京都、神奈川県の中学を第一希望校とする子どもたちも受験するので、倍率は異常に高くなる。辞退者を見越して多くの合格者を出すので実質倍率は下がるが、学校によっては昨年合格者を多く出し過ぎて空き教室が限定され、例年より狭き門になることもある。試験問題を難しくしてくる学校もあり、実際、入試が始まってみないとわからない。道場スタッフは生の入試状況を見極めながら、終わった入試問題を入手して解いて分析して受験生にフィードバックして、次回に目標を定めさせる。
能登半島地震の影響か、地元の、より自宅に近い、行きたい中学に進学を決め、1月受験の合格で終了した生徒もいる。この保護者からメールが届いた。
「(略)幼稚園から通っていた花まる学習会の学習スタイル、理念を信じて、西郡学習道場に入塾しました。 西郡学習道場で特に良かったことが2つあります。
一つ目は朝道場。朝道場のおかげで早寝早起きが定着し、成長期に正しい生活リズムで受験に挑むことができました。しっかり睡眠をとることで、知識の定着を図れることも先生から学びました。(入試1か月前に子どもを朝型の生活に戻せと塾から言われたママ友は困っていたので、初めから朝道場をしている西郡道場はさすがだなと思っていました。)二つ目は志望校選びでした。偏差値ばかりに目がいってしまうなか、どのような環境、学校の教育方針で子どもを学ばせたいか、子どもの趣味、思考を伸ばしてあげられるかを1番に、学校を選ぶことを教えていただきました。何度か偏差値の少しでも高い学校選びへ気持ちがブレてしまったときは、先生から面談で軌道修正していただきました。そのおかげで親子関係が崩壊することなく、子どもがノイローゼになることもなく、無事に親子共に笑顔で受験合格を果たすことができました。(略)」
1月には、関西圏の中学受験もある。学習道場の活動すべてがオンラインになったので、関西圏の花まる学習会から学習道場へ移る生徒、HPから入塾する生徒もでてきた。
12月になって中学受験の重圧に耐えきれず、勉強が手につかない、もう中学受験を辞めると言い出した生徒がいた。本気の決断か一時の迷いか、受験担当スタッフが面談を重ね、結果は恐れず、これまでやってきたことは無駄にならない、最後までやりぬこうという話をする。受験する気持ちをなんとか持ち直して、入試に挑んだ。受験校の一つは面接試験もあるので私が面接の練習をした。姿勢をつくり、「はい」の返事を繰り返し、自分のやりたいことを軸に問答練習をした。授業や自学室では画面の中央に顔を出すこと、隠さないことを繰り返し注意した生徒で、返事も聞こえるか聞こえないかの小声で、小6の反抗的な態度ともサボりの面倒な態度ともとれる生徒だった。しかし、面接練習をしてみると、素直な態度で、いい姿勢と相手に刺さる「はい」の返事もでき、相手に届く声量で話もできる。ついこの間まで受験を辞めると言い出し、投げた子がここまで変わったことに驚いた。さらに、試験会場入りする直前に、インターネットを繋いで応援するのだが、この子の性格をいままで見誤っていたと思うほど、陽気に明るく振る舞う。私たちに心配をかけまいとしての心遣いなのか、極度の心細さを隠す虚勢なのか。いざ、試験が始まったら、陽気さも覚めて真っ白になりはしないかという不安も一瞬よぎったほどだが、後日、見事に合格の報告があった。
中学受験を選択しなければできない、追い詰められた経験、凝縮された濃い時間を過ごした子どもたちは、入試直前の一か月で大きく変わっていく。
西郡学習道場代表 西郡文啓