Rinコラム 『子どもと「まね」』

『子どもと「まね」』2018年4月

子どもは「まねる」生きものです。
特に7歳くらいまでは、いい悪いの判断をせずに、まるでスポンジのように五感を通してすべての出来事をただ吸収していきます。

子どもとかかわる大人であれば、
おそらくお母さんの口ぐせであろうセリフを作文で書いたり、もっともらしく話したりする様子をみるにつけ、その子の家庭の様子が透けて見えて、おかしくってたまらない経験をしたことがあるでしょう。

脳神経細胞のミラーニューロンは、他人の行動を見ていると、まるで自分がその行動を行っているかのように反応するそうです。
スポーツや音楽の世界でも、きっとプロの動きを間近で見るだけで、私たちの脳細胞はそこからすでに学んでいる。
小さな赤ちゃんでさえ、大人のしぐさを本能的にまねますし、「おままごと」は、家族の様々な人の役割を「まね」をして演じることでそのロールモデルを学んでいる。

まねることは、学ぶこと。
子どもたちにとって、最も根源的で本能的な学びが、「まねる」ことなのです。

そう考えると、子どもたちにとって良い教育とは、まず大人自身が「子どもにまねられるに値する在り方でいる」のことなのでしょう。

「ホラ、ちゃんと挨拶して!」「そんなときは、何ていうの!」と子どもに言う前に、わたしたち大人達が、どうまねをすればいいかを、ちゃんと見せ続けてあげる。

「わたしの振る舞いは、子どもが見て、まねるに値しているだろうか」
「昨日の私よりも、今日の私は成長しているだろうか」

子どもを前にするとき、私はいつもこのことを、自分の胸に問いかけます。

私たちが想像する以上に、子どもたちは周囲の人の、行動を見て、その人が今をどんな気持ちで生きているのか、本質的に見抜いています。

そして、いつも成長する心を持ち続ける人間に、ついてきてくれるからです。
 
井岡 由実(Rin)