Rinコラム 『自由な創作の過程にある「自分との対話」「没頭」』

『自由な創作の過程にある「自分との対話」「没頭」』2019年3月

 創作活動に没頭している間、子どもたちの中でいったい何が起きているのでしょう。
 それは「自分との対話」です。
 「対話」というと、人と人の間に存在するもの、と考えることが多いかもしれません。しかし実際には、内なる自分と対話することのほうが多いのが、人間という生き物です。
制作中の子どもたちは、「もっとこうしたい」という内なる欲求を確かに感じ取り、自分自身と向き合い始めます。
 「誰かのために」ではない、「自分のための」制作の時間。それが「上手であるか」どうかではなく、表現する過程そのものに夢中になっているのです。
 それが「何なのか」を知りたくて制作しているときもありますし、創作中のハプニングから発想を転換し、うまく作品に昇華することもあります。
 人に言われてやる何かではなく、そもそも正解のない世界で、自分自身の正解を探し続ける。
「人生は旅のようだ」と昔の日とは言いましたが、創作の時間はそれに似ています。
 自分との対話を重ねる旅を通して、社会に出た時の確固たる自分、この先の人生を有意義なものにしていく力を育てている。
 人が自分で主体的に生きていると感じるためには、他者からの承認のうえに、自分が判断している、自分が決めているという実感を持つことが必要です。
 大人にとっても、幸せの軸はそこにあるはずです。
 幼児期にその実感を得られるのは、夢中になって遊んでいるときです。熱中すると時間を忘れて没頭する、その感覚を持てているかどうかを、大切にしてあげてください。
 子どもたち自身の中に、学びたいことは存在しています。
 それに向かって、自分で内容をデザインできる、それが「創作活動というあそび=主体的な学び」なのです。
 例えば花まるの年中年長コースでも、創作の時間、同じテーマに沿って実験するとき、新しい知識や発見や驚きを、感動とともに仲間と分かち合い、それぞれが「思考と想像の体験」に没頭します。その間、講師は作品の出来不出来を評価することはありません。
 なぜなら、「対話する過程そのもの」に、重きを置いているからです。自分なりの感じ方・考え方を築き、他者との違いを、豊かさと感じられるように。そのことが、ひとりひとりのアイデンティティをかたちづくっていくからです。
               ARTのとびらきはん:「じゆうにやりたいように」より
 
井岡 由実(Rin)