花まる教室長コラム 『実におもしろい』秦野達也

『実におもしろい』2023年12月

 年中の授業中。1本のストローに異なる大きさの輪を2つつけて飛ばす“ストロー飛行機”で遊んだときのことです。 「うわぁ! 飛んだ! すごい!」と目を輝かせる子どもたち。飛ぶ原理を考えるよりも「飛んだ!」という結果そのものに興味を抱き、好奇心が駆り立てられ、やってみたい! と頭で考える瞬間には手を動かし始めている様子でした。この瞬発力はさすが幼児期の子どもたち。まずはやってみよう! と臆することなく見よう見まねで取り組めるところが素敵ですね。
 そのうえで「おぉ! これは伸びるわ!」と感じた、Kくんの行動がありました。すでに何度もフライトに成功した自作のストロー飛行機を眺めながら「うーん」と何やら考えている様子。飛行機を持つ手をグルグルと動かしながら考える様は、数式を書き出すガリレオのよう。止まらない手と同様に動き続ける思考。そしてひらめいたKくん。「先生! ぼくこの飛行機をもう1個作りたい!」と目を輝かせました。「いいね! やってみよう!」と材料を渡すと、先ほどよりも手際よく組み立てていきます。完成させた飛行機をどうするのかと思って見ていると「この2つをくっつけちゃうんだ!」と、ニヤッと笑いながらセロハンテープを取り出しました。ペタペタとテープを使い、2機の飛行機を合体させます。完成した巨大ストロー飛行機。トランスフォームの完了です。「よーし! 大きい飛行機になったぞ‼」(大きければ大きいほど嬉しい。赤い箱〈幼児期〉の特徴でもありますね)と輝く笑顔。さあ、テイクオフ! 輪とストローが増えたことで安定感もアップした巨大ストロー飛行機は、先ほどよりも飛距離を伸ばすことに成功していました。

 傍から見たら一度完結したと感じられるそのあとに「さらによく(おもしろく)するには」ということを考えていたKくん。ナイスアイデア! 素敵な発想! これでいいじゃん、と自分で限界を決めるのではなく、壁を突き破る。猪突猛進。現状維持で満足するのではなく、さらにおもしろいアイデアを生み出していくことができる。
 いいね。“メシが食える大人”への階段を着実に上がっているね。と心のなかでつぶやいた私です。

 子どもたちの持つ力は底なしで天井知らず。大人に比べると経験値が低いからこそ、先を見通してブレーキを踏むということをせずに、さまざまなことに挑戦できるのかもしれませんね。

 サマースクールで出会った1年生のMちゃん。みんなで楽しむ川遊び。自由遊びの時間になると、野生の川魚を捕まえよう! と必死に水面に顔をつけて探し回る様子が見られました。誰よりも長く(心配になりたまに声をかけるほど)水面に顔をつけ「いた!」「あ! 見つけた‼」と何度も魚を発見する様子は漁師さながら。職人の如し。ただあと一歩“捕まえる”ところまでは思うようにいかず苦戦し続けていました。さて、ここで諦めることなく、心折れることなく、どうすれば捕まえられるだろう…と考えを巡らせるMちゃん。川底の石を拾い、大きな岩に絵を描くようにこすりつけていました。じゃりじゃりと石を持った手を動かし続けています。(来た! ガリレオタイム!)さて、どうするのでしょう。
「石を削ってできあがった砂を使って罠を作るんだ!」
とMちゃん。魚がいそうなところに砂を撒き、目くらましをする作戦、とのこと。実におもしろいアイデア! だがしかし、撒いた砂は川の流れに乗って下流へとドンブラコ。
「あ! 流れちゃった! 次はどうしよう…」
思い通りにはいかなかった、という発見をも楽しんでいる表情で、次の作戦を練るMちゃんでした。

花まる学習会 秦野達也