囲碁の効能③ 目の前から何かを感じ取ろうとする「意識」

そこにあるものから、感じ取ろうとする意識

まったく知らないところから囲碁を学び始めた子どもたちを見てきて、一つ大きな壁として見えてきたのが「そこにある石の並びから、何を感じ取るか」です。こう書くと「どのように見るのか」という力があるかどうかの話に見えますが、実はその前にもっと大事な感覚があります。「そもそも、そこから情報を得ようと思う意識があるか」です。

いまそこに打つと、こっち側がとられちゃうよ!そこを攻めていると、こちらがやられてしまうよ!よく考えてよ~と大人の側から見ると、思ってしまうシーンが多々あります。 

ただ間違えたくないのは、子どもたちは考えていないのではなく、「今自分が打ちたいところ」に注目して考えているということです。意図、意欲、意思のあることなので、チャレンジとしてむしろ高速回転でどんどん取り組ませたほうが良いのです。

精神的な成熟=他者性が一つのカギ

ではどういうときに情報を得ようと思えるようになるのか。ひとつには精神的な成熟が必要、ということはあるでしょう。小学生の子どもたちを多く見ていると、おおむね3年生が一つの転機となっているようです。自分本位の世界から抜け出し、他者を絡めた社会的視座を手に入れ、例えば恥じらいや同調など、他人の思考に敏感になっていきます。

女の子はもう少し早いくらいかもしれません。中には未就学のころからその成熟がある子もいます。花まる学習会の年長コースにて、女の子から耳打ちを受けているときに、他の女の子から

「そういうの、やめてくれる!?女の子はそういうのが一番嫌なんだよ!」

と言われたことがあります。自分だけの主張としてでなく、女の子というくくりからの意見として言えるとは…と面食らいました。実際にその子はアルゴクラブで全国大会の代表になれるほどの実力を早い時期からつけていきました。

いつか誰にでも来るものではあるけれど、それを早めることは非常に難しい。できるとしたら豊富な対人経験を積むことでしょう。いつその花が開くのかは、じっと見守るのが賢明です

今からたくさん経験を積むことが、あとで花開くポイント

であるならば、その成熟が来るまで、何かをするのに早すぎても意味がないのでは?というご意見を聞くこともありますが、それは違うと考えています。

情報を得ようと思えるようになるために、もうひとつ大事だと考える要素が「膨大なトライ&エラー」だからです。いわゆる”経験値”が実体験としてどれだけ蓄積されているか。さらには「うまくいかないなぁ」とモヤモヤするエラーを感じ取っているか。

最初は打っているだけで楽しかったけれど、やはりそれに慣れてくると、うまくいかないことが気になってきます。その過渡期には、やるだけで楽しいはずなのにどうも気持ち良くなれない、葛藤が生まれてきます。

喉元過ぎれば熱さを忘れるもので、次の対局が始まると気持ちを切り替えられることが多いのですが、やはり一度気づくようになると何度も葛藤を感じるようになります。その感覚を、普段の生活で感じる以上に膨大に受け取るその経験こそが「ここに何かあるぞ」と感じ取る意識を育んでいきます。

成熟を迎えたときに、葛藤に勝る思考意欲・感じ取る意識が育っているかどうかで、その先の成長に大きな違いが出てくることは間違いありません。

一方で成熟を迎える前の葛藤は、ともすれば打ち負けてしまうこともあります。そうならないように、楽しい中で、葛藤があっても寄り添って、子どもたちの思いを大事に、GONOUの授業を行っていこうと思います。


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