2001年、花まる学習会がまだ小さな塾だったころ、
教室で教える傍ら、児童精神科医の故稲垣卓先生とともに、
不登校の子どもたちとその家族を支援する相談室Saliを立ち上げました。
家族でのカウンセリングのほか、
絵画療法、遊戯療法、箱庭などを用いて子どもたちとセッションを続けます。
ただ聴くだけでなく、一緒に何かを作りながら、内なる対話を通して、
子どもたちは疑似的に心の葛藤を体現していきました。
描いたり創ったりすることが、彼らの内面を表現することを手助けし、
確実に何かを浄化し続けているのだと気がついたのは、このときです。
創作を通して自分を表現することは、
子どもたちに、計り知れないパワーを与えていました。
子ども時代、緘黙かと思われるほどの引っ込み思案だった私も、創作に救われた一人です。
おじいちゃん先生が自宅で開いていた造形教室は、
口を開かないありのままの私でいてもいい場所でした。
その記憶は、いつの時代も私の土台になっています。
2016年で8年目となる創作ワークショップ「Atelier for KIDs」は、
そんな私にとってライフワークともいえる活動です。
私自身が創作活動をしていく中で、
日々生まれるインスピレーションを子どもたちと共有できたら、
きっと面白いに違いない。
そんな喜びに満ちた気持ちからスタートしました。
これまでの活動を通して確信していることは、
この空間でこそ、子どもたちのこころを解放し、
強力に※非認知能力を育成できるということです。
創作が「何かひとつ」のよりどころとなっている子どもたちと、
毎月ただ表現することで、何もかもを浄化しながら共に成長している、そんな感覚です。
なぜ、芸術と同じ比重の情熱を教育にも注いできたのか。
それは教育の現場が私にとって、
子どもたちと共に創りだす「即興アート」であったからでした。
その場で感じて返す、生きたレスポンスを通して作り上げられる、特別な空間。
その美しさ、儚さ。
常に同じであることはなく、より高みを目指し成長し続ける姿勢。
それが真の教育現場にあるもので、芸術性を失ったらそれは、教育とは言えない。
子どもたちが、この世に生まれてきた時から持っている、
唯一無二の魅力と個性を、ちゃんと自分で信頼できることの大切さ。
そのことを伝えていく、引き出していくことに、教育の意味があると思っています。
私にとって、教育と芸術は同時に存在し、かつ、かけがえのないものなのです。
井岡 由実(Rin)